パ・リーグ首位を独走するソフトバンクの原動力、柳田悠岐には、史上9人目の「トリプルスリー(3割、30本、30盗塁)」が視野に入っている。
柳田のセールスポイントはその豪快なフルスイングだ。これは幼少時から培われたものだという。少年野球時代の恩師で、柳田が所属した「西風五月が丘少年野球クラブ」の山本侃靖副代表が証言する。
「柳田君は今は“ギータ”と呼ばれているが、ウチのチームではヘッドコーチがつけた“ヤンナン”が愛称でしたね。痩せ型でミートがうまい選手でした。元々は右打ちでしたが、足が速いので小学5年の時に監督が左打ちに転向させた。フルスイングはチームの方針。バットを思い切り振らせる習慣がありました。
私の手元にはまだ右打ちだった小学5年当時の動画が残っています。打撃フォームはこの頃からまったく同じ(笑い)。中・高、大学、プロと、指導者に長所であるフルスイングをいじられなかったんでしょうね」
野球評論家の杉本正氏が頷きながら語る。
「確かに入団以来、同じフォームで打っていますね。二軍では三振も多かったが、当たれば凄まじい飛距離とスピードの本塁打を打つことで知られ、藤本博史コーチ(現・SB二軍打撃コーチ)がフォームをいじらずに温かく見守った。その結果がうまく出ているのだと思います」
関係者の話によれば、球団は柳田を「色々触らずに大きく育てる」方針だったので、藤本コーチが指導したのは「振りに行く時に左足がブレることを注意しろ」ということくらいだったという。目標に設定したのはメジャーリーガーのデービッド・オルティス。藤本コーチが柳田に写真を渡して、「こんなイメージでやれ」と伝えると、柳田はつい最近までその写真をロッカーに貼っていたのだそうだ。
「明るく天真爛漫な性格で、何も考えていない天才型のように思われがちですが、非常に研究熱心。毎試合後、スコアラー室へ直行し、映像で当日の自分の打席をチェックする。打席で自分の眼で見た投球の軌道と、実際の映像の投球軌道を比較して、その誤差を解消する作業をしているそうです」(スポーツ紙記者)
※週刊ポスト2015年9月4日号