大学院生の男が弁護士男性の局部を切断した事件。ペニスの切断とはまさに常軌を逸した凶行だが、同様の惨劇は過去に世界中で起きている。不倫相手の女性に切断されたケースや、殺害された友人の怨みを晴らすため犯人男性の性器を切断したケースなど、加害者と被害者の関係性や犯行動機はさまざまだ。
日本では、性交中、オーガズムのために女性が愛人男性の首を締めて殺害し、その後ペニスを切断して持ち歩いていたという「阿部定事件」が有名だ。1982年には交際相手の浮気に激怒して殺害した後、切断した「第2の阿部定事件」も起きたが、これらはいずれも殺害後の切断である。
手術によってある程度の機能回復は可能とはいえ、セックスの快感を喪失し、ショック死の恐怖を被害者は味わった。それに比して、加害者の小番一騎(こつがい・いっき)容疑者が問われる罪はそれほど重くないという。
「重大な傷害を負わせたわけですが、腹などを刺したのならともかく、局部の切断をもって殺人未遂に問うことは難しいでしょう。傷害罪の上限は15年ですが、前例のないケースでもあり、結果が重大であることを考慮しても3~5年ぐらいの判決が予想されます。
民事の損害賠償としては、職務の稼働能力に直接影響する障害ではないので逸失利益は認められにくく、700万~900万円程度の慰謝料額と思われます」(弁護士で琉球大学法科大学院教授の北河隆之氏)
ペニスがなければ生きている価値がない──そう思う男性も少なくないはずだが、男のイチモツは法律上はそれほど重く見られない可能性があるということだ。
※週刊ポスト2015年9月4日号