【書籍紹介】『藤子スタジオアシスタント日記 まいっちんぐマンガ道』えびはら武司/竹書房/1404円
『ドラえもん』『オバケのQ太郎』に『プロゴルファー猿』。「藤子不二雄」が描いた大人気マンガのほんの一部です。ご存じのとおり、藤子不二雄は藤本弘と安孫子素雄の2人組の漫画家でした。後にコンビを解消しそれぞれ藤子・F・不二雄と藤子不二雄(A)として活躍するのですが、2人の青春時代をもとにした藤子不二雄(A)の自伝的作品『まんが道』には決して色あせない友情とマンガ愛が描かれていて、たくさんの藤子作品とともに私にとっての永遠のバイブルなんです。
そんな藤子不二雄の2人をアシスタントの視点から描いたエッセイマンガがえびはら武司『藤子スタジオアシスタント日記 まいっちんぐマンガ道』です。
1980年代にちょっとHなコメディー『まいっちんぐマチコ先生』で一世を風靡した作者ですが、実は1973年から1975年まで藤子スタジオで藤本先生のアシスタントをしていたそう。本書では当時の仕事場の日常が4コマでイキイキとつづられます。特に連載初期の『ドラえもん』創作裏話はファンには宝石のよう。人気キャラのモデル(?)や最終回のエピソードなどが明かされています。
子供向けの名作を残したためか聖人めいたイメージすらある藤本先生ですが、本書から見えてくるのは人間味あふれる創作者の姿。人と話すのが苦手で繊細で、独りコツコツ仕事を進める天才肌。当時、同じペンネームを使いつつもすでに仕事は別々にしていた外交的で明るい相方・安孫子先生との無言の信頼関係にもぐっときます。大好きな2人組へのリスペクトでいっぱいの貴重な証言に、胸が熱くなりました。
(文/横井周子)
※女性セブン2015年9月3日号