8月5日、東京・新橋。ゴルフメーカー大手のPRGR(プロギア)が開いた記者会見は報道陣で埋まった。その場で発表されたのは、PRGRが高反発ドライバーを10月上旬から発売すること。これまで一部の中小メーカーだけが取り扱っていた商品に、ついに大手が参入した形だ。
高反発ドライバーは、その名の通り反発係数を高めて飛距離を生み出すドライバーのこと。2000年以降に大流行したが、過剰ともいえる開発競争でボールの飛距離が伸びすぎて問題になり、世界のゴルフ・ルールを司るR&A(全英ゴルフ協会)が反発係数を抑えるルール変更に乗り出して、日本でも使用が禁止された。結果、高反発ドライバーは使用できない“違反クラブ”となり、市場から姿を消していた。
「高反発ドライバーはJGA(日本ゴルフ協会)も認めていないクラブ」。PRGRの会見でも飛び出した言葉だ。そもそもこの会見に注目が集まったのは、この“違反クラブ”を大手があえて作るという決断を下した背景に、高い関心が寄せられたからである。PRGRは質問に対し、次のような説明をした。
「もちろん大前提はルールに則ること。競技に出る人は使えず、プライベートプレーでのみ使用が可能となりますが、昔のような飛距離を取り戻すことでシニアのゴルフライフに大きな飛びと喜びを与えたい」
また「JGAとは連絡は取っていない」としたが、それでも販売に踏み切ったのは「ユーザーの根強いニーズがあった」からだった。
売り場の状況がこれを裏付けている。近年はエンジョイゴルファー向けに高反発ドライバーを発売する中小メーカーが急増し、現在は10社以上が発売。多くの売り場で『高反発コーナー』が設けられている。
「昔のように飛ばしたい、もっとゴルフを楽しみたいというシニアゴルファーや女性客を中心に売れています。定年を迎えて接待ゴルフもなくなり、クラブ競技にも出ない。昔の仲間とプライベートゴルフを楽しみたいという方が購入されています」(都内のゴルフショップ店員)
※週刊ポスト2015年9月4日号