全身ピンクの衣装を着ているもっとも有名な日本人コンビといえば、日本では林家ペー・パー子夫妻である。しかし、フランスでは意外な“全身ピンクコンビ”の名前があがるのだ。コラムニストのペリー荻野さんが“フランスでもっとも有名な日本人”について綴る。
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初めて観たときは、てっきりお笑いコンビかと思ったレ・ロマネスク。なんたって、目の前に現れるのは、全身どピンクの王子様風衣装に、顔にはくるるんヒゲでトランプのキングみたいなTOBIと、相方はやっぱりどピンクに巨大金髪アフロ、唇が白く無表情のMIYAである。
初見でこのふたりを「11年間パリで活躍し、ヨーロッパのクラブシーンやフェスティバルで人気を博し、『フランスで一番有名な日本人』になったポップデュオ」だと見破るのは、無理ってもんである。ついでに言えば、ジェーン・フォンダと「パリ国際映画祭」の公式マスコットとして広報大使も務めてもいる。「マスコット」という言葉が妙にしっくりくるのがミソですな。
そんなレ・ロマネスクは、2011年から日本に拠点を移し活動中。びっくりしたのは、NHKEテレの『お伝と伝じろう』のメインキャストを始めたことだった。国語の「聞く」「話す」など言語活動のヒントが満載のこの番組。もちろんここでもふたりのナイスな外見はそのまま。毎回「始まりは自己紹介」「しっかり聞く」などのテーマが、パリからやってきた異質な転校生伝じろう(TOBI)と三人のこどもたちと語り合いながら進められる。
たとえば「今日は句会」の回では、俳句が五七五で構成されていることや季語があることなど基本を伝授。こどもたちからよい反応が返ってくると、伝じろうはつけまつ毛の目をしばしばさせながら、「トレビア~~~ン!」と叫ぶのだ。
こどもたちのどんなにユニークな言葉でも懐深く受け入れるTOBI。そっかー、どピンクもくるるんヒゲも伝じろうならではの個性を伝える手段なのね、と感心していると、横にはお人形のように無口なお伝(MIYA)が。なるほど、言葉を発しなくてもちゃんと伝わることもある。無理して愛想笑いもボケも突っ込みもしなくてよし! なんだかじーんときた。
そして、番組の締めくくりは、テーマ曲『伝わレレレ』である。ああ、♪伝わレレレのレレレが頭から離れない…。暇さえあれば時代劇を見ている私が、まさかどピンクデュオにしてやられるとは思ってもみなかったが、やっぱり面白いのである。
そして、彼らの初の著書『レ・ロマネスク公式ガイドブック ジュテームのコリーダ』(扶桑社)もやっぱり面白いのである。著書の表紙までもピンクでまぶしいというのは、いったいどういうことか。著書によれば、トランプのキングかと思っていたTOBIは慶応大学卒業後、入社した会社が次々倒産、人生をリセットするために一番興味のない国に行こうと渡仏し、気が弱くて断れないままにポップな活動を続け、今に至る二児の父であるという。そしてMIYAは、ドラァグクイーン(男性)と間違われるが、「女装した女性」であることもわかった。
この夏のツアーでは、0歳から80歳までの来場者があり、みんな笑顔で歌い踊ったという。ライブ追っかけ女史の話では「会場はピンクだらけ」「謎の一体感がある」。だいたいライブって、夜だけだと思ったら、彼らはお子様も参加できるよう昼間もやってるのだ。未就学児童は無料! 素晴らしい。みんなで踊レレレ。目に見えるようだ。