今年に入り、老老介護疲れ殺人事件・殺人未遂事件と呼べる悲惨な事件が立て続けに起きている。1月17日に千葉県で起きた殺人事件は、72歳夫の介護に疲れた77歳妻が包丁で刺して起きた。滋賀県で2月28日に起きた殺人事件は、認知症を患う81歳妻の介護に疲れた82歳夫によるものだった。7月19日には神奈川県で83歳の夫が認知症の81歳妻の胸を刃渡り9.5センチの果物ナイフで刺した。
そして、7月27日、自宅で妻(71)を絞殺した夫(80)の初公判が大分地裁で開かれた。病気でうつ状態になった妻は、今年2月に入ると「父さん、私を何とかして!」と何度も夫に殺害を依頼していたという。
当初は妻からの懇願を断わり続けていたが、服も自分で選べなくなるなど認知症の症状が激しくなっていく妻の変貌ぶりを目にし、“殺したほうがいいのかもしれない”と思い詰めるようになった被告。犯行後、「介護疲れで妻を殺した。私も死にます」とメモを残して、自殺を図るも未遂に終わった。弁護側は執行猶予付きの判決を求めている。
北海道で今年2月、71歳の妻を殺害した容疑で夫(71)が逮捕された。認知症の妻は、介護認定を受けていた。息子との3人暮らしだったが、仕事に追われる息子に代わり、夫が1人で妻の介護を担った。デイサービスなどの利用が可能だったが、介護保険制度を「知らなかった」(公判証言)夫は公的サービスに助けを求めることはなかった。
やがて夜間徘徊を繰り返すなど妻の症状は悪化。夫は十分な睡眠を取れず、入浴の時間もなかった。
事件当日、食器を割り、服をゴミ箱に捨て始めた妻の姿を見て、「もう自分の手には負えない」と絶望。妻の首を両手で絞めて窒息死させた後、自殺を図ったが失敗。帰宅した息子が110番通報した。
一審で懲役2年6か月の実刑判決が言い渡されたが(高裁に控訴中)、裁判官は判決で「被告は認知症や介護保険制度への知識が不十分で、家族に迷惑をかけまいと1人で抱え込んでいた。介護で精神的、肉体的に追い込まれ、強く非難できない面もある」と指摘した。
※週刊ポスト2015年9月4日号