「魅力がない」「精力がない」「甲斐性がない」と新たなパートナーとの恋愛と性愛をあきらめているシニア世代の男性諸氏に、本誌は声を大にして訴えたい。「あなたは大きな誤解をしている」と──。
60歳を過ぎても出会いたいと心から欲する人だけが、素敵な女性と未知の快感を得られるのだ。
「死ぬまで現役」の最大の障害となっているのが、残念ながら夫婦関係である。
もちろん、何歳になっても仲むつまじく性生活を営む夫婦は少なくない。それこそが「死ぬまで現役」の理想形といえる。
しかし、既婚者の約半数近くがセックスレスといわれる現代において、ほとんどの夫婦がお互いに性的関心を失っているのが現実だ。日本では世間体やモラルを気にするあまり、家庭に縛られて自由な恋を楽しむことができない。
そんな非恋愛体質の日本人に対し、「フランス人を見習ったほうがいい」と提言するのは、フランス文学者の鹿島茂氏だ。
「フランスの夫婦の多くは事実婚です。だから年寄りなのにパートナーがいつの間にか変わっているなんてことは年中あります。久しぶりに会った人が前と違う異性を連れていて、『あれ、この人だっけな?』と戸惑うことは日常茶飯事です。
同じくらいの年のパートナーもいれば、はるかに若いパートナーもいたりします。レストランに行けば、“この2人はどういう関係なんだろう”と物語を想像したくなるようなカップルがたくさんいて、2人だけの会話をひそかに交わしています」
「還暦=現役引退」と考える日本人とは異なり、フランス人は、引退後にこそ人生の楽しみがあると考える。その楽しみの中には当然セックスも含まれる。フランス人の老後の自由な恋愛にセックスは欠かせない。
しかし、日本では年をとって離婚して、老後を支え合う家族を失うことは残りの人生で大きなリスクを背負うことになる。
そこで求められるのが、「60歳を超えた恋は不倫じゃない」という概念だ。
「日本人の人生の楽しみ方には社交という概念がありません。日本人男性にとっての社交とは、同僚と会社帰りに新橋あたりで飲むこと。定年になったらその社交もなくなり、家にいて奧さんに放っておかれる状態になる。
だったら新しい社交を求めて自分から動けばいい。奧さんから男として用済みと扱われているなら、奥さんを嫉妬させるくらいのことをしなければ男じゃないでしょう」(鹿島氏)
夫も妻も互いの新しい恋に干渉せず、最後の拠り所となる家庭は堅持する。これこそ、「生涯現役」を実現する知恵なのだ。
※週刊ポスト2015年9月4日号