「いろんなかたに、“感動した”って言ってもらえました。あの子も喜んでましたよ“ぼくも、みんなに勇気を与えられたのかなぁ”って…」
そう言って目を細めるのは、長野県箕輪町に住む山田倫太郎くん(13才)の母親のこづえさんだ。
生まれつき心臓の左心室と右心室が分離していない「フォンタン術後症候群」という、1万4000人に1人という難病を抱えて生まれてきた倫太郎くんは、8月23日、『24時間テレビ』(日本テレビ系)に出演し、こう訴えた。
「ぼくは、半分死んだ状態で生まれました。多くの人々に支えられて、今の自分があります。自分の命を大切にしてください。そうすれば、他人も大切にすることができます」
不整脈、肝硬変など全身の臓器障害を抱え、どこに行くにも酸素吸入器が手放せない倫太郎くんの“命の言葉”に、スタジオは涙に包まれた。放送翌日、女性セブンが倫太郎くんの自宅を訪れると、こづえさんと父親の浩隆さんが取材に応じてくれた。
難病を抱えながら、倫太郎くんは明るく前を向いて生きている。その明るさはどこからくるのか。そんな問いに、浩隆さんはこう語った。
「いろんな人に聞かれるんですけど、私も不思議なんですよね。周りの人に恵まれていたからかな…。あとは、息子には夢中になれる趣味があるからでしょうね」
テレビには映らなかったが、闘病を続ける倫太郎くんには、昔から何よりも大切な時間があるのだという。
「絵本を描くことです。それも、帯や作者紹介、あとがきなんかも全部書いて、製本までするんです。日本書紀とか歴史や神話ものが大好きで、昔から絵本の読み聞かせもよくしていたんですが、その時から作者紹介とかも全部読ませられて、不思議なこだわりがありました(笑い)」(浩隆さん)
妖精や野菜が旅をしたり、病院の検査の不安から子供を助けるためにヒーローがやってきたり…。そんな絵本はすでに9冊になる。
「最近は、パソコンのワードが使えるようになって、小説なんかも書いています。創作活動が生きがいになっているみたいですね。“同じように苦しんでいる人たちに、自分の作品を届けたいんだ”って…。本当に、やさしい子なんです」
そう語る浩隆さんは、倫太郎くんが5年前に書いたある作品を教えてくれた。それは、弟(5才)が母親のお腹の中にいる時に綴ったこんな詩だった。
《兄弟ができた どんな名前にしようかな ぼくは心臓が悪いから 今度こそ健康に生まれてきてほしい ぼくより長生きしてほしい 兄弟は支え合ったり 時にはけんかしたりきずなを深めあえるもの》
※女性セブン2015年9月10日号