北朝鮮と韓国の間の軍事的緊張が急激に高まっている。きっかけは8月4日、北朝鮮側が軍事境界線の近くに設置した地雷によって韓国軍兵士2人が重傷を負ったことだ。それに対し、韓国は境界線にスピーカーを向けて北朝鮮を非難する放送を始めた。20日、北朝鮮は放送をやめさせようと韓国を砲撃し、それに韓国軍も撃ち返すなど、泥沼の状態に陥った。
たかが“スピーカー放送”だと侮ってはいけない。防衛省関係者が言う。
「たとえば選挙カーは小さな2つの拡声器だけでも耳を押さえたくなるほどの音が出ます。韓国軍は兵士2人がかりで運ぶ大型拡声器を数十個並べ、超巨大スピーカーを作った。これはもう“兵器”です。東西248kmの軍事境界線沿いに30個並べ、昼夜問わず大音量で流し、約30km先まで聞こえるそうです。境界線付近の北朝鮮兵や人民は夜も眠れずノイローゼになります」
その放送内容も北朝鮮の独裁者である金正恩にとっては耳に痛いものばかり。たとえば、「人民は飢えていても、金ファミリーは毎晩の酒池肉林パーティーで贅沢三昧」、「脱北して韓国に来ると幸せな生活が待っている」などの宣伝放送や楽しげなKポップを流し、北朝鮮兵士の戦意を喪失させる内容だ。それに金正恩が激怒し、最前線の戦力を2倍以上に増やし、砲撃に打って出た。
金正恩は20日、「準戦時状態」に突入することを宣言し、いよいよ朝鮮戦争の勃発かと危ぶまれた。ところが一転、25日未明、両国による話し合いで「準戦時状態」は解除された。
だが、今回の危機はそう簡単には収まらないと、前出の防衛省関係者が言う。
「軍備で劣る北朝鮮軍が唯一長けているのは奇襲。話し合いで解決したと見せ、相手が油断したところで、いきなり襲いかかる作戦は充分に考えられます」
さらに心配されるのが「軍の暴走」だ。
「金正恩は2011年の就任以来、側近の粛清を続けてきました。長年、金ファミリー体制を支えてきた70代、60代の重鎮たちが排除されたことで、国の運営さえままならない事態になっているが、一方で軍の幹部は大幅に若返りました。50代、40代の若い世代が軍の実力者になったが、若い彼らは血気盛ん。しかも、相当な不満も溜まっている。暴走して戦争を始めようとする若手軍人がいてもおかしくありません」(前出・防衛省関係者)
そんな中、北朝鮮の潜水艦部隊は軍港を出て、海中に潜っている。それが不気味な存在だという。
「北朝鮮にとって敵は『日米韓三角軍事同盟』。韓国と同じように日本とアメリカを敵視している。もし戦争を起こすなら、まず強大な戦力を持っている在日米軍を足止めするために、日本国内の原発やインフラ設備、米軍施設を狙ってテロを起こすでしょう。実際、北朝鮮は日本国内のテロを想定したシミュレーションを行っている。潜水艇などを使ってこっそり工作員を上陸させてのテロ計画を警戒する必要がある」(前出・防衛省関係者)
※女性セブン2015年9月10日号