フジテレビ系『全力!脱力タイムズ』などに出演中の、東京未来大学・こども心理学部部長の出口保行さんへのお悩み相談コーナー。今回は何かと口出ししてくる母親に関する相談です。
【相談】
「ママの言うとおりにすれば、間違いないから」「こうすることが、あなたのためだから」と、母は子供の頃から、私がしようとすることすべてに口を出します。進学する学校も、私ではなく、母がすべて決めたところでした。社会人になった今も、変わらず自分の意見を押しつけてくる母にうんざり。このままだと結婚相手まで決められそう。どうしたらいいの? (名古屋・希美・26才)
【解説】
子供の頃から母親の意見が絶対でそれに応えてきた希美さん。よくぞ「このままでは…」と、将来を悲観することができましたね。というのも、希美さんと母親のような親子関係が続くと、それが当たり前になり、息苦しさを感じなくなるケースのほうが多いからです。
希美さんは母親からモラルハラスメント、いわゆる「モラハラ」を受けているのです。
モラハラといえば、ちょっと前に芸能人夫婦の離婚原因として話題になりましたが、それが起こるのは夫婦だけではなく、職場、友人、親子間にもあることなのです。
親子間のモラハラとは、親が子供に対して、しつけや教育のつもりで、支配的な言動や指図をすることです。親子のモラハラは、子供が親から逃げたり、避けたりできないことが大きな問題です。そして、「あなたのためだから」というフレーズが、親から離れること、親を否定することに罪悪感を持たせ、それに応えられない自分がいけないと思うようになるのです。
ハラスメントをする人は自分の支配欲が強く、相手が自分のいいなりになっていくことにサディスティックな快感を得る人が多いようです。
最初は言葉や態度の暴力だったのが、だんだん攻撃行動、つまり肉体的な暴力に変わっていく場合もあります。それがひどくなると殺人までいってしまう、まさにエスカレート犯罪にもなり得るのです。
100%支配していると思った相手が、だんだんそうではなくなって、自分の価値観などが出だすことは、このタイプにはゆるされないのです。
セクハラ、パワハラ、マタハラも、根底は同じです。ハラスメントをする人とそうでない人の違いは、“誰にでも多少はあるサディスティックな気持に快感を覚えて生きているかどうかの違い”です。
モラハラの問題点は、「そんなつもりではなかった」と、加害者に自覚がないことです。 ですから、被害者が態度を変えたり逆らったりするのは、押さえつけが激しくなるだけで、得策とはいえません。
加害者に理解してもらいたいなら、当事者同士で話し合ったり、解決するのは無理なので、ある程度、公平な立場にいる第三者を交えることが必須となります。第三者に助けてもらうというより、公平な話し合いをするために不可欠だということです。
しかし、それも不可能なら、理解してもらうことはあきらめて、家を出るなど、その場から逃げることです。状況を変えるには被害者が行動に出るしかないのです。
この時期が遅くなればなるほど加害者からの支配から抜け出すのが大変になります。 それでも、相手が連絡を取ってきた場合、それには応じないことです。
とくに親となればためらいも出てくるでしょうが、「自分の人生を生きていいんだ」と、自分を励ましながら、親との関係を絶つことも視野に入れて、断固たる措置をとることです。親が絶対ではないし、最後に頼れるのも自分であり、親ではないのですから。
※女性セブン2015年9月10日号