ビジネス

経済成長とGDPの間違った関係 なぜ生まれたか専門家が解説

 ニュースでよく耳にする「経済成長」という言葉があるが、それは具体的に何を意味しているのだろうか。経済学者で投資家の小幡績氏が、「経済成長」が何を指しているのか、経済成長とGDPの関係について解説する。

 * * *
 ニュースでよく聞く「経済成長」とは何でしょうか。

 定義上は「GDPの増加」のことです。GDPとは国内総生産(Gross Domestic Product)のことで、一定期間に生み出された付加価値(売上高から仕入れ値を差し引いたもの)の合計になります。簡単な言い方をすると、「企業の利益と労働者の所得の合計」です。要は、国内の儲けの総額です。

 ニュースでよく聞く、「日本の成長率は前年同期比で2%になりました」「年率換算で3.8%でした」というのは、このGDPの増加率のことです。

 ここに間違いの始まりがあります。人間の場合には「成長」というと、不可逆的なもの、つまり成長したら元に戻ることはないものと考えられています。老衰というものはありますが、それはかなり先の話で、成長といったら段階的に、あるいは少しずつ伸びていくもので、今月は伸びたけど、来月は縮みそうだ、ということはないですよね。

 しかし、GDPは増えたり減ったりします。実際、日本のGDPを例にとると、年率で2014年4~6月期はマイナス7.1%、7~9月期はマイナス1.9%、10~12月期はプラス1.5%、2015年1~3月期はプラス3.9%という具合に増減しています。そして先頃発表された4~6月期(速報値)はマイナス1.6%でした。

 これが成長の度合いだとすると、日本経済は成長期にあるのか、衰退期にあるのか、どっちなのかよくわかりません。3か月ごとに成長したり衰退したりするのはどういうことか、と不思議になるでしょう。

 その疑問はもっともで、GDPの増減率を経済成長率と呼ぶこと自体が間違っているのです。

 これは景気の波です。景気は数年周期で循環します。調子が良くなったり悪くなったりする、バイオリズムみたいなものがあります。3か月ごとのGDPの増減率は景気循環の波や短期的なさまざまな要因によって変動するのです。これは成長とは全く関係ありません。

「経済成長」とは本来、長期的な話なのです。GDPでいえば、その増加率の長期のトレンドということになります。今後10年の平均成長率を考えたり、過去10~20年のGDP増加率の傾向を見たりすることが、本来すべき経済成長についての議論なのです。

●小幡績(おばた・せき)1967年生まれ。1992年東京大学経済学部卒、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2003年より慶應義塾大学大学院経営管理研究科准教授。『円高・デフレが日本を救う』など著書多数。

※週刊ポスト2015年9月4日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

中居正広氏の兄が複雑な胸の内を明かした
【独自】「弟がやったことだと思えない…」中居正広氏“最愛の実兄”が独白30分 中居氏が語っていた「僕はもう一回、2人の兄と両親の家族5人で住んでみたい」
NEWSポストセブン
2024年末に第一子妊娠を発表した真美子さんと大谷
《大谷翔平の遠征中に…》目撃された真美子さん「ゆったり服」「愛犬とポルシェでお出かけ」近況 有力視される産院の「超豪華サービス」
NEWSポストセブン
新田恵利(左)と渡辺美奈代があの頃の思い出を振り返る
新田恵利×渡辺美奈代「おニャン子クラブ40周年」記念対談 新田「文化祭と体育祭を混ぜたような感覚でひたすら楽しかった」、渡辺「ツアーも修学旅行みたいなノリ」
週刊ポスト
放送時間を拡大しているフジテレビの『めざましテレビ』(番組公式HPより)
日テレ『ZIP!』とフジ『めざまし』、朝の“8時またぎ”をめぐるバトルがスタート!早くも見えた戦略の違い
NEWSポストセブン
新政治団体「12平和党」設立。2月12日、記者会見するデヴィ夫人ら(時事通信フォト)
《デヴィ夫人が禁止を訴える犬食》保護団体代表がかつて遭遇した驚くべき体験 譲渡会に現れ犬を2頭欲しいと言った男に激怒「幸せになるんだよと送り出したのに冗談じゃない」
NEWSポストセブン
公的年金は「社会的扶養」「国民の共同連帯」「所得再分配機能」(写真提供/イメージマート)
《まるで借りパク》政府の基礎年金(国民年金)の底上げ案 財源として厚生年金を流用するのは「目的外使用」ではないのか、受給額が年間8万円以上減額も
NEWSポストセブン
地元の知人にもたびたび“金銭面の余裕ぶり”をみせていたという中居正広(52)
「もう人目につく仕事は無理じゃないか」中居正広氏の実兄が明かした「性暴力認定」後の生き方「これもある意味、タイミングだったんじゃないかな」
NEWSポストセブン
『傷だらけの天使』出演当時を振り返る水谷豊
【放送から50年】水谷豊が語る『傷だらけの天使』 リーゼントにこだわった理由と独特の口調「アニキ~」の原点
週刊ポスト
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
《英国史上最悪のレイプ犯の衝撃》中国人留学生容疑者の素顔と卑劣な犯行手口「アプリで自室に呼び危険な薬を酒に混ぜ…」「“性犯罪 の記念品”を所持」 
NEWSポストセブン
原監督も心配する中居正広(写真は2021年)
「落ち着くことはないでしょ」中居正広氏の実兄が現在の心境を吐露「全く連絡取っていない」「そっとしておくのも優しさ」
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
〈山口組分裂抗争終結〉「体調が悪かろうが這ってでも来い」直参組長への“異例の招集状” 司忍組長を悩ます「七代目体制」
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(時事通信フォト)
「うなぎパイ渡せた!」悠仁さまに筑波大の学生らが“地元銘菓を渡すブーム”…実際に手渡された食品はどうなる
NEWSポストセブン