9月8日に告示される自民党の総裁選挙。ライバルの石破茂・地方創生相が事実上の出馬断念を表明すると、各メディアは一斉に「安倍晋三首相が無投票当選」と報じた。実はこの裏で、何が何でも「無投票再選」に持ち込みたい首相サイドは党内引き締めに躍起になっていた。
安保法案の強行採決で安倍内閣の支持率が30%台に急落すると、石破グループ内から「総裁選に挑むべきだ」と主戦論が挙がった。官邸や自民党執行部がそれにぶつけたのが、石破支持派議員に対する“公認外し”の恫喝だった。
さる8月3日、自民党は安倍首相出席の選対本部会議で来年夏の参院選の1次公認候補39人(選挙区27人と比例代表12人)を決定した。そのうち比例代表には「女性活躍社会に向けて候補の約3割を女性にする」という方針から、3人の女性新人候補が選ばれた。
ところが、なぜか現職の自民党女性局長である三原じゅん子氏が漏れた。現職の改選組では他にも小坂憲次・元参院幹事長の名前もなかった。2人とも前回の総裁選で石破氏の推薦人を務めた石破支持派の中核だ。石破側近議員が語る。
「小坂さんの場合、『来年の改選時に党の内規である議員定年の70歳を超える』と説明された。しかし、小坂さんより年上の水落敏栄氏は公認されたし、一昨年の参院選でも当時71歳だった山東昭子氏が公認されて当選している。
『なぜ、水落、山東は公認されて小坂はダメなのか』という疑問の声が挙がると、選対の幹部は『水落の支持基盤は日本遺族会で支持者が70歳以上だからいいんだ。山東は何かの手違いで公認された』といってのけた。三原氏が漏れたのは“石破が総裁選に出馬する気なら公認しないぞ”という嫌がらせとしかいいようがない」
三原氏の事務所に聞くと、「現在、神奈川県連からは内定を頂いておりますが、県連における手続きの関係上、党本部にはまだ上申されておりません」と回答した。
総裁選出馬には国会議員20人の推薦人が必要だ。対立候補を支持する議員たちに“推薦人になるなら次の選挙で公認しないぞ”と圧力をかける横暴なやり方だ。
※週刊ポスト2015年9月11日号