8月25日に神宮球場で行なわれたヤクルトVS巨人戦を伝えるラジオ「ニッポン放送 ショウアップナイター」では、ともに元ヤクルト監督である球界の重鎮・野村克也氏と関根潤三氏の2人が解説席に並ぶ画期的な放送が実現し、大きな話題となった。抱腹絶倒のW解説を誌上再録する。
中継はプレイボール30分前から始まったが、実況を担当した山田透アナウンサーは大変だっただろう。御大たちは試合開始前からエンジン全開だった。
──(混戦のセ・リーグを)関根さんはどうご覧になっていますか?
関根:わかんねぇ。
──上にいたチームは連敗しないですかね。
関根:わかんねぇ。
聴取者がすわ放送事故か、とヒヤヒヤする中、山田アナが野村氏に水を向ける。
──ノムさん、こんなペナントは経験ありますか。
野村:ないですね。ここに来て5位、6位は難しくなったけどね。
野村氏の的確な返答にホッとする聴取者。
──関根さん、残り30試合でひっくり返せる許容範囲内はどれぐらいですか?
関根:わかんねぇ。
そして試合が始まった。関根氏は88歳、野村氏は80歳。2人合わせて「168歳解説」というのが、今回の「ショウアップナイター」の触れ込みだった。自然と年齢の話になる。
──関根さんが昭和2年、野村さんが昭和10年生まれ。
関根:ノムさんとそんなに違うの。ノムさん、サバ読んでるんじゃないの?
野村:そんなに老けて見えますか。
関根:僕はノムさんの方が上だと思っていたもの。
野村:わっはははは。
──試合は始まっています。関根さん、(ヤクルト先発)石川(雅規)のようなピッチャーは立ち上がりにどのようなピッチングをすれば?
関根:わかんねぇ。
この放送が実現したきっかけは今年6月、野村氏が解説を務めた際に「関根さんはどうしてる?」と口にしたのが発端だという。
「神宮の放送ブースは高い場所にあるので、お二方の長い階段の上り下りはヒヤヒヤしました(笑い)。中継も長丁場ですし。でも実況席近くのファンの方にも拍手をいただき、お2人にも喜んでもらえたようで良かったです」(広報室)
関根氏はこう語る。
「一生懸命やった。楽しかったよ。いいたいことは話せたかって? まあ、適当にやっていました」
一方の野村氏。
「難しいね。テレビはプレー中に喋っても画面が視聴者に伝わるが、ラジオは実況している間は話せない。ピッチャーが1球投げると話が消えてしまう。しかし巨人はいかんな。ありゃ打線じゃなくて打順だ。1人1人孤立して繋ごうという意識がない。普段の監督、コーチの指導がわかるね。子を見れば親がわかる、選手を見ればチームがわかる」
※週刊ポスト2015年9月11日号