子供のいじめが無視や暴力だけでなく、かつてよりも残虐かつ陰湿になっており、学校はそれに対応できていない。ここでは、いじめ調査を行う探偵がかかわった、壮絶ないじめ事件のごく一部を、ありのままお伝えする。わが子が同じ目に遭ったら…。そんな視点で読んでほしい。
小学5年生のA子さんはやさしい性格で、クラスでは目立たない存在だった。
ある日、休み時間が終わり、A子さんが教室に戻ると、自分の机にチョークで「死ね」「出て行け」「学校に来るな」などと書いてあった。さらに、大事にしていた、親友との交換ノートが破かれていた。
それまでいじめられたことなどなく、突然のことにショックを受けたA子さんは、その場に泣き崩れてしまう。
すると、後ろから1人の男子生徒がA子さんを羽交い締めにし、泣きはらした顔を無理やり上に向けた。その時である。クラスでもっとも体格のいい男子が、A子さんの顔面めがけて、思いっきり飛び蹴りを食らわしたのは――。
鼻がぐにゃりと曲がり、流血で顔も洋服も真っ赤に染まる。痛みと恐怖で呼吸ができず、しゃくりあげるA子さん。しかし、そんな彼女に声をかけるものはいなかった。それどころか、鼻血を流すA子さんの顔を指さし、クラス中が笑ったのである。
A子さんは、そのまま学校を飛び出して帰宅。顔面血だらけで帰ってきた娘に「どうしたの?」と聞く母親を振り切り、A子さんは2階のベランダに出ると、そのまま飛び降りようとした。
追いかけてきた母親が必死でしがみつき、何とか自殺は食い止められた。しかし、その後すぐに学校に電話をした両親が、担任教師から聞いた言葉は耳を疑うものだった。
「みんな何もなかったと言っています。お笑い芸人のマネをしていただけだと――」
「数年前、某バラエティー番組で女性アイドルが男性芸人に顔を蹴られるシーンがあって、物議を醸しました。この番組の放送後、それをマネしたいじめが多く報告されました」(T.I.U総合探偵社代表の阿部泰尚さん)
この事件も、そのひとつだ。
その後、不登校になったA子さんの携帯電話に、クラスメートから「ごめん」というメッセージが何通か来た。阿部さんは送信相手に、誰がやったかを確認。特定された加害者は謝罪をしたが、A子さんは、それを受け入れられなかったという。
「加害男子は、『A子さんが泣き崩れたところが、テレビで蹴られたアイドルとフラッシュバックしておもしろかった』と言っていました」(阿部さん)
最近の子供は、いじめと遊びの境界がわからないのかもしれない。
※女性セブン2015年9月10日号