9月8日に告示される自民党の総裁選挙。ライバルの石破茂・地方創生相が事実上の出馬断念を表明すると、各メディアは一斉に「安倍晋三首相が無投票当選」と報じた。
実は首相サイドは無投票再選に持ち込むために石破グループの議員に対し、次の選挙での公認をたてに圧力をかけていた。
さらに“兵糧攻め”にも出た。自民党総裁選は国会議員の投票と党員投票の合計で決まる。前回総裁選で党員票で安倍氏を上回った石破氏は、安倍政権下でも地方創生担当相として地方を回って地盤を固めてきた。地方では、「アベノミクスの恩恵が回ってこない」と不満が強いだけに、石破氏が出馬すると地方の票を大きく集める可能性があった。
そこで安倍首相は8月4日に官邸で開いた『まち・ひと・しごと創生本部』の会議で、財政難を理由に来年度の地方創生予算(新型交付金)を今年度の1700億円から大幅に減額して1000億円規模にする方針を決定した。
「交付金を大盤振る舞いすれば、石破の功績になって地方票を稼がれてしまう。だから予算を絞って石破に対する不満が高まるようにする狙いがあった」(官邸筋)
狙いは的中し、自治体からは「これでは地方創生の看板に偽りありだ」と担当大臣の石破氏に批判が向けられている。政敵を潰すために平気で看板の地方創生政策まで捨てたのである。
石破氏ほどの“強敵”とはなり得ない野田聖子氏にも容赦はない。野田氏はシンパの議員と定期的に会合を開いている。8月に入ると首相支持派の先輩議員から「勉強会にはしばらく出ない方がいい」と諭され、参加者はどんどん減っていった。
野田氏は「初当選以来、それ(総理総裁)を目標にしなければ堕落すると思ってやってきている」と、なおもあきらめていないが、地元・岐阜市で記者団に“出たくても出られない状況”を吐露している。
「毎回毎回、(総裁選出馬を)考えてはやめたり、やめさせられたり、色々ありますけれども、今も同じような状況です」
「出馬をやめさせられたり」という野田氏の言葉はそうした圧力で推薦人が集まらない苦衷を意味していたのだろうか。
2人を出馬させないために公認外しに兵糧攻めまで徹底したのだ。
※週刊ポスト2015年9月11日号