9月8日に告示が予定されている自民党の総裁選で、対抗馬が出ないほど権勢を誇る安倍晋三・首相が、唯一恐れる存在が自民党の長老たちだ。それを暴露したのが、参議院の抜本改革を求めて自民党会派を離脱した脇雅史・前自民党参議院幹事長だ。脇氏は8月24日付産経新聞のインタビューで、長年参院自民党を牛耳ってきた3人の重鎮の弊害を語った。
「『AMK』って知っていますか。Aは額賀派(平成研究会)の青木幹雄元参院議員会長、Mは細田派(清和政策研究会)会長だった森喜朗元首相、Kは岸田派(宏池会)名誉会長の古賀誠元幹事長です。参院には、この3人を後ろ盾に3派の言うことを聞いていればいいという風潮が根強い。AMKも、いまだに色々な情報が集まるので面白く、現役に口出しを止めません」
厄介なことに、AMKはその参院での影響力を梃子にして、いまも国政に口出しを続けている。
わかりやすいのが森氏だろう。新国立競技場問題では、五輪組織委員会会長である森氏が、大好きなラグビーのW杯が開催される2019年に競技場の建設を間に合わせるために現行案に固執(森氏自身は「はじめにラグビーありき」を否定)。官邸内では計画見直しにあたって、「森さんの怒りをどうやってなだめるか」が問題とされ、最終的には安倍首相が森氏に自ら“平身低頭”で説明して納得してもらった。
国会内でも「森さんを諫めたり、進言する人が誰もいないことが、今のスポーツ界における最大の危機だ」(松沢成文・参院議員)といわれ、新聞には「森さん なぜ今もエラいの?」(東京新聞7月22日付)とまで書かれた。「今もエラい」のには理由がある。東京の自民党地方議員がいう。
「安倍さんが総裁に返り咲いた前回の総裁選では、選挙終盤に森さんが自民党都連のドン・内田茂さんに票の取りまとめを要請に来た。森さんはもともと石原伸晃さんを推していたが、劣勢とみるや都連に『石破(茂)を当選させないために安倍に入れてくれ』といってきた。議員引退後も政府と地方のパイプ役を担っているのが、森さんのパワー」
総裁選での恩義があるから、安倍首相も森氏には頭が上がらないのだ。
※週刊ポスト2015年9月11日号