霞が関の官僚は総理大臣の支持率が高く、権勢を振るっているときは、その懐に入り込んでともに貪る。だが、いったん落ち目になると、残った権力をとことん使わせ、役所に都合のいい政策を進めさせようとする。本誌伝統企画・覆面官僚座談会を緊急招集した。出席者は財務省の中堅A氏、経産省中堅B氏、外務省若手C氏だ。官僚たちは今何を考えているのか。
──増税したい財務省にすれば、安倍晋三政権が弱体化するほどコントロールしやすくなる。
外務C:一番てっとり早いのは、財務省嫌いの安倍総理と菅義偉官房長官を引き離すこと。最近、2人の関係にすきま風報道がしきりに流れている。
経産B:防衛省からも5月に作成した部隊運用の内部文書が流出し、共産党の手に渡った。防衛省内には外務省主導の安保法制に不満が強い。内閣支持率が下がったタイミングであることを考えると、安倍政権の揺さぶりを目的とした政治的意図を感じる。森(喜朗)政権末期や第一次安倍政権末期も官邸のネガティブな情報がどんどん漏れて支持率が急降下した。今回もリークは増えていくのではないか。
──ズバリ聞くが、財務省は安倍政権に退陣してもらいたい?
外務C:基本的に信頼関係がないから、そうなんじゃないですか。
財務A:とんでもない。財政再建をしっかりやっていただければ不満はありません(笑い)。
経産B:石破茂、谷垣禎一、林芳正、ポスト安倍の有力候補はみんな財務省に洗脳されてガチガチの増税論者。いま、財務官僚は安倍総理が後継者にしようとしている「稲田姫」(稲田朋美・政調会長)に張り付き、教育中じゃないですか。
──しかし、その稲田政調会長は安倍政権の経済政策の基本方針(骨太の方針)に歳出削減目標を盛り込むように主張したが、菅官房長官や甘利利明経済財政相に突っぱねられた。
財務A:稲田さんが負けるのは想定の範囲内。ウチの上層部は稲田さんが官邸相手にどこまで頑張れるかを試したかったのだと思う。
経産B:財務省が政治家を試すときによくやる手法で、稲田姫がどこまで財務省のいいなりに動くかという試験だった。それに合格した。
外務C:これで安倍政権が倒れたとき、誰がポスト安倍に登場しても財務省がヘゲモニーを握れるというわけですね。
●司会・レポート武冨薫(ジャーナリスト)
※週刊ポスト2015年9月11日号