誰もがいつかは体験することなのに、あまり知られていないのが身近な人が亡くなったときの手続の数々だ。そうした現実に立ち向かうための『身近な人が亡くなった後の手続のすべて』(自由国民社刊)が21万部の大ベストセラーとなっている。同著の監修者で司法書士の児島充氏が、お金に関する手続きについて解説する。
【1】預貯金・有価証券などの相続手続き
故人の口座の預貯金を相続する場合、死亡の事実をそれぞれの金融機関に伝えた後に相続人の届け出を行なう。そこで初めて相続人による払い戻し(出金)などが可能になる。
「名義人の死亡を伝える際に、併せて相続書類を受け取るか郵送を依頼しておけば一連の手続きがスムーズになります」(児島氏。以下「」内同)
株式などで財産を管理しているケースも、基本的には銀行口座の手続きと同じ流れだ。
「相続人は証券会社に電話で被保険者が亡くなった旨を伝え、その後に相続人の届け出を行ないます。有価証券を相続する場合、相続人名義の管理口座を開設する必要があります。相続株式をすぐに売却する場合でも基本的に管理口座は必要です」
これらの手続きの際に多くの人が頭を抱えるのが、「故人がどの金融機関でどのくらいの額を取引していたか」を把握できないことだという。児島充氏はこうアドバイスする。
「『◯×銀行にいくら』とか『□△会社の株式をいくつ』などの情報を記録した一覧表を生前に用意してもらうことを勧めます」
【2】葬祭費・埋葬費の支給申請
故人が国民健康保険・後期高齢者医療制度に加入していた場合は葬祭費(3万~5万円程度)が、現役の会社員などで健康保険に加入していた場合は埋葬費(5万円以内)が支給される。
「期限は2年以内ですが、うっかり忘れてしまうケースも少なくありません。退職した後に死亡した場合でも、退職後3か月以内であれば埋葬費の請求は可能です。被保険者の家族が亡くなった場合でも家族埋葬料として5万円が被保険者に支給されます」
この際に必要となるのは「葬儀費用の領収書」と「印鑑」だ。
【3】高額療養費の請求
国民健康保険、後期高齢者医療制度、健康保険の加入者が病院や薬局の窓口で支払った額が一定の金額を超えた場合に、超過分の払い戻しを請求できる。これは死亡後でも請求可能なので、終末期医療にかかった費用を確認しておきたい。
※週刊ポスト2015年9月11日号