秋以降の重要な政策や人事を非公式に協議する北戴河会議で、江沢民・元国家主席ら長老指導者による習近平批判が噴出した。一体どんな様子だったのか、ジャーナリストの相馬勝氏がレポートする。
* * *
北戴河会議では、日中関係の対立回避に舵を切ろうとする習近平の方針に、長老指導者から不満の声が続出しているという。
江沢民は「最近の安倍は中国に対抗するために安保法制を整備したり、わが国の東シナ海のガス田開発を批判。さらに南シナ海の問題で米軍との協力姿勢を強めている」などとしたうえで、習近平の対日関係緩和姿勢を批判。胡錦濤も「現実を直視して、冷静に対日外交を決める必要がある」などと江沢民と歩調を合わせた。
習近平は「安倍首相の(戦後70年)談話を見極めたうえで、対日外交を改めて考えたい」と述べるにとどまったという。
中国では知日派の王毅外相や唐家セン元国務委員らの指導者が安倍談話について、『侵略』『植民地支配』『反省』『お詫び』の4つのキーワードを入れるよう求めていたが、これは習氏の強い意向が働いているとみられる。
これを裏付けるように、党機関紙「人民日報(電子版)」は安倍談話発表1日前の8月13日、習近平が国家副主席就任以来、これまで8年間で、日中関係について重要な発言を27回も行ったとして、それらすべてを再び報じた。2007年11月22日の北京での谷垣禎一・自民党政調会長(当時)との会見から、今年5月23日の「中日友好交流大会」での重要講話までである。
そして、安倍首相が14日に発表した談話には4つのキーワードはすべて入っていた。しかし、それでも中国側の反応は予想外に極めて厳しいものだった。
新華社電は日本やロシアなどの海外の専門家の分析を紹介する形で、
「(安倍談話は)歴代内閣の立場を回顧し間接的に『反省』と『お詫び』に触れたが、先の世代の日本人に『謝罪の宿命』を背負わせてはならないと宣言した…中略…安倍談話は誠意に乏しいもので、過去の侵略の歴史について真剣な反省を行ったものではない」
と論評した。15日付「人民日報」は3面のコラムなどで、新華社電同様の論点で、「その誠意は村山談話に比べて、遠く及ばない」とバッサリ。
また別の記事では、鳩山由紀夫元首相が12日、韓国ソウルの西大門刑務所跡地で、献花した場でひざまずいて手を合わせ、頭を下げた行動について、「これこそ、日本の指導者の模範だ」と暗に安倍首相も鳩山元首相と同じように謝罪すべきと主張した。
※SAPIO2015年10月号