夫婦の日常も様々だが、あらゆる夫婦のエピソードが、漫談家の綾小路きみまろにメールや手紙で続々と寄せられている。今回寄せられたのは、デザイナーのご主人(54歳)。奥様(54歳)も同業です。テーマは「移住」についてです。
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妻とは同じ東京のデザイン事務所に勤めていましたが、子供が社会人になったのを機に、昨年、夫婦で長野に移住し、個人でデザインの仕事を始めました。
長野は「田舎暮らし希望地域ランキング」で常に上位の県。仕事面では長野在住でも特に困りません。東京のクライアントとの打ち合わせはテレビ電話でできますし、どうしてもという時は、新幹線なら1時間ちょっとで東京に行けます。
何よりも生活のリズムがいいですね。夜は暗くなるので、自然と寝る雰囲気に。朝日と共に目覚め、暗くなったら寝る。集中力も増しますし、いい仕事ができます。
ただ、こちらは人間関係が狭くて濃い。知り合いばかりになりますし、お年寄りが多いので、50代は若者扱い。妻は「お嬢さん」と呼ばれて喜んでいますけど、僕は「若いんだから」と、おばあちゃんに荷物運びを手伝わされて困っています。
あと、プライバシーがないですね。カギをしていると、「勝手に入れないじゃないか!」と怒られるんです。留守中に雨が降った時、洗濯物を取り入れてくれて助かることもあるんですが、この前なんか、隣のおじいちゃんが僕の仕事部屋から巨乳アイドルの写真集を持ち出し、「こういう女がいいんだ?」。
台所にいる妻に「お嬢さんも今はしぼんじゃってるみたいだけど、昔はデカかったんだろうね」。「お嬢さん」という言葉にニヤついて、後半の言葉に無頓着の妻ですが、いつかは騒動に……。
ああ、夢の田舎暮らしの現実って厳し~い!
※週刊ポスト2015年9月18日号