影の総理といわれる菅義偉・官房長官が自らについてメディアに語ることは、ほとんどない。安倍晋三首相との付き合いの原点や、いまの政治家に対する思いなどをノンフィクション作家の森功氏が連載SAPIO「総理の影 菅義偉の正体」の中でインタビューした。
──現首相の安倍晋三との付き合いはどこからか。
「私がまだ当選二回のとき、自民党総務会で北朝鮮に対する制裁法をつくるべきだと発言し、それを耳にした当時の安倍官房副長官から会いたいという話があって『菅さんの発言は正しい。私も実現できるよう応援する』っていう話になったんです。その時、(安倍の)政治家としての懐の深さには感服しました」
──他に政界で期待する人物はいないか。維新の党の橋下徹をずい分買っているようだが。
「橋下徹と松井一郎という政治家は捨て身で政治を行っていますから、二人を信頼しています。そもそも橋下さんを紹介されたのは、大阪の国会・市会議員の人たちからなんです。当時、選対副委員長であった私から橋下さんの市長選挙への出馬を説得してほしいということだったんです(後に府知事選に出馬)。
私自身も総務副大臣時代から横浜市のほうが大阪市より人口が百万人も多いのに、逆に大阪市の職員が二万人も多かったので、大阪の職員は多すぎる、改革は必要だと問題にしてきました。その意味でも、大阪都構想の住民投票否決には感慨深いものがありました」
もとはといえば橋下徹を政界の舞台に担ぎ上げようとした張本人が菅義偉だという。菅はインタビューを通じ、常に言葉を選び、慎重に答えた。この九月には、安保法制の国会審議が大詰めを迎え、沖縄の米軍基地移設問題という難題に取り組まなければならない。そんな菅の視線は、すでにポスト安倍を睨んでいるようにも思えた。(敬称略)
※SAPIO2015年10月号