日本人の「がん」の中で最も多いのが胃がんだ。1年間で約13万人の患者が生まれ、5万人近くが亡くなっている。そうした中で、地方自治体が行なう胃がん検診が大きく変わる。「バリウム検査」より確実に高い発見率を誇る「内視鏡(胃カメラ)」による検査が選択肢に加わる見通しなのだ。
発見率の高さや検診方法に正式採用されたといっても、胃カメラと聞いただけで「生理的に無理」と感じる人は少なくないだろう。「体の中に太い管を入れるなんて怖くてできない」「飲む時に苦しい思いなんてしたくない」といったマイナスイメージが根強くある。
だが、そうした印象はもう過去のものだと北青山Dクリニック・阿保義久院長はこういう。
「現在では、鼻から内視鏡を挿入する『経鼻内視鏡』が一般的になってきています。内視鏡のスコープ部分の直径は5~6ミリ。鼻にはスプレー式やジェル状の部分麻酔をかけるため、注射の必要もありません。医師と話しながら検診を受けられるほど、患者にとっては負担の少ない検査になっています。
細い経鼻内視鏡は以前は、左右のアングルが確認できなかったり、ライトが1つであったりといった、病変を詳細に観察しにくいデメリットがありましたが、近年はどんどん改良が進んでいます」
胃カメラによる胃がんの検査を終えた40代男性はこう語る。
「何年も前に、胃カメラを飲んだときはかなり苦しい思いをした記憶があるんですが、今回は全然違いました。鼻から入れるタイプのもので、途中で苦しくなることもなく、“えっ、もう終わりなの?”って感じでした」
胃カメラを飲んで吐き気を催したり、苦しい思いをしたりするのは、口から挿入するタイプ(経口内視鏡)で起きることがほとんどだ。舌の付け根(舌根)にスコープが触れた時に起きる「咽頭反射」が“オエッ”となる感覚の原因である。鼻から入れる胃カメラなら、舌の付け根に触れることなくスコープが食道へと入っていく。
※週刊ポスト2015年9月18日号