橋下徹大阪市長や松井一郎大阪府知事は大阪維新の会を軸に新党を立ち上げる構えだ。これには「大阪の名前を掲げて国政で勝負できるか」という声がある。
私の見方はまったく逆だ。「大阪」という言葉にこそ意味がある。大阪に住んだこともない私が言うのも気が引けるが、敢えて言おう。日本の政治がダメなのは、かなりの部分、格好ばかりを気にする東京の建前論に引きずられているからではないか。
たとえば新国立競技場問題はなぜ、あんなにゴタついたのか。カネもないのに「世界に2つとない立派な施設を」と見栄を張った部分がある。最初から普通の競技場で十分だった。
大阪市や府、あるいは大阪のテレビ局で政策の議論をしてみると、東京とはまったく違う感性に気付かされる。ガチンコの本音で勝負しなければ相手にされないのだ。カブキのような国会論議をぶち壊し、真の改革を進めるためには、そんな「大阪流の野党」こそ必要である。
それは地域活性化にも役立つだろう。全国どこを訪れても、多くの人が心の底で東京への憧れを抱いている。「東京なんてたいしたことあらへん」という大阪の気概が国政で爆発すれば、必ず他の地域を勇気づけるはずだ。
だから、私はぜひ新党には「大阪」の名前を掲げてほしい。大阪の名で永田町や霞が関、虎ノ門のばかばかしさを思いきり笑い飛ばしてもらいたい。
いまの日本には、そんな破天荒さこそが必要なのだ。
■文・長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ):東京新聞・中日新聞論説副主幹。1953年生まれ。ジョンズ・ホプキンス大学大学院卒。規制改革会議委員。近著に『2020年新聞は生き残れるか』(講談社)
※週刊ポスト2015年9月18日号