8月15日、アメリカ・サンフランシスコに中国国外初の「抗日戦争記念館」がオープンした。米国を舞台にした中国「反日宣伝」の現場を、在米ジャーナリストの高濱賛氏がレポートする。
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「霧の都」サンフランシスコを訪れる観光客は年間ざっと1600万人。その4割の640万人がチャイナタウン(中華街)を訪れる。
終戦記念日の8月15日、土産物屋や中国料理店が立ち並ぶその一角に、中国国外では初となる「抗日戦争記念館」(中国名=海外抗日戦争紀念館)がオープンした。中国国内のそれは「反日教育」の拠点として機能しており、そうした「反日拠点」が初の海外進出を果たしたことになる。
といっても、中国国内にあるような規模の建物ではない。広さは2階建ての1000平方メートル。中国本土から台湾経由で米国に移り住み、功なり名を遂げた女性実業家フローレンス・ファン(方李邦琴=80)氏所有の物件を6万ドルかけて改修した。費用は華人有志から集めたという。
プロジェクトを全面的に支援したのは中国系反日団体の「世界抗日戦争史実維護連合会(抗日連合会)」のイグネシアス・ディン(丁元)副会長。背後には中国政府の姿が蠢いている。
昨年4月、ファン氏らは「抗日戦争勝利70周年組織委員会」を立ち上げ、同7月にはその目玉として記念館建設が発表された。ファン氏は館長に就任、名誉館長には反日活動で知られる日系のマイク・ホンダ下院議員が名を連ねた。
「郊外なら大きな記念館が建てられたが、たとえ狭くてもチャイナタウンの中なら世界中からやってくる観光客など多くの人たちに日本人の残虐行為について知ってもらえる」と、ファン氏は中国共産党機関紙「人民網」とのインタビューで述べている。
開館式にはチャイナドレスを着たファン氏のほか、中国本土から来た国務院僑務弁公室主任(元外務次官)、北京大学副学長、駐サンフランシスコ総領事や韓国総領事らも顔を見せた。中韓両政府が、米国における市民団体の反日活動に本格的に乗り出してきたことを宣言したわけだ。
※SAPIO2015年10月号