世界の“奇妙なもの”を収録し写真集として異例のヒットを飛ばした『奇界遺産』の写真家で、常人離れした旅人たちが出演する人気テレビ番組『クレイジー・ジャーニー』(TBS系)でも話題の佐藤健寿さん。これまでに約90か国を訪れ、チェルノブイリからパプアニューギニアの少数民族まで幅広く取材。本邦初の本格的人工衛星写真集『SATELLITE』(朝日新聞出版)を近々発売するなど独特に活動の幅を広げている。そんな佐藤さんに「奇」なものを追う理由について話を伺った。
――これまでかなりの数を取材していると思いますが、次に目をつけている「奇界」は、どこですか?
佐藤:単純に時間さえかければ行ける場所というのはある程度行ってしまっているので、どんどんハードルは上がっています。場所に行くこと自体に許可が必要な場所が増えてきているので。申請して半年間待たなくてはいけなかったり。今目をつけているのは、具体的には言えませんがロシアの方ですかね。北朝鮮のある場所にも行ってみたいですけど、旅行はすべて管理されていて、自分でどこでも好き勝手に行けるわけじゃないですから。
――結構危険な場所も多いと思いますが、チェルノブイリの立ち入り禁止区域や毒ガスの火山などに行く時も、あまり臆すことはないのでしょうか?
佐藤:そうですね。危ない場所に行けば行くほど冷静になるというか、なるようにしかならないという気持ちにはなるかもしれません。でもどこかで線引きはしていて、その線は直感みたいなものだとしか言えません。一線を無意識的に超えてしまうことと、リスクを承知で意識的に超えることは、似ているようでその差はとても大きい。海外でよく旅行者が被害に遭うパターンというのは、状況を知らずに無意識に超えてしまうんですよ。それはだいたい無知に基づくもので、現地の人が行かないところにも好奇心でふわっと入ってしまったりしていると思います。
――危険な場所に行くのは、怖くないですか?
佐藤:怖いですけど、大丈夫かどうかはある程度、感覚的にわかるんですよ。紛争が激化していて退避勧告が出ている中東のイエメンに行った時にも、何度も現地の人と連絡を取って、今なら大丈夫と言うタイミングで行こうとした時に、行く前日に、泊まる予定だったホテルのすぐ傍で、たくさんの死者が出たものすごい自爆テロが起きたんです。その時はどうしようかと思いながらも、いろいろと情報を調べてみて大丈夫そうだと思った。それで一応行ってみたわけですが、もし危なかったらすぐに引き返そうと思ってました。でも、数日いてみて空気感的に大丈夫だなというのがわかったというか。こういう踏み込むタイミングと諦めるタイミングは経験と直感によるので、口でうまく説明できないんですけど。
――これまでに危険に遭ったことや怖い体験はありますか?
佐藤:UFOが目撃されていると言われるアメリカのエリア51へ行ったときに、車で事故を起こしたことはあります。あとは昔、現地のUFO研究家と、車で軍が管理するUFO目撃地帯に行った時に、その人がすごくびくびくしていたんですよ。そしたら途中で急に前方に光が見えたと思ったら、「車を止めろ」と言ってカバンから拳銃を取り出してドア越しに構えるんですよ。「今向こうに動いてる何かがいた、追われてる可能性がある」と言い出して。拳銃出された時にはドキッとしましたね。