両親の虐待から逃れるために、愛犬・シロとともに家を出た13才の少年は43年もの間、足尾銅山の洞窟や川べりでサバイバル生活を続けた。人とのかかわりを避け、ヘビやイノシシ、魚などを捕えて飢えをしのいで…。
7月20日に放送された2時間ドラマ『洞窟おじさん』(NHK BSプレミアム)が話題を呼んでいる。
「新しくて、温かくて、深い…。この反響に異例のことですが、すぐに再放送が決定されました。何よりこのストーリーが実話だということに衝撃が大きかったようです」(ドラマ関係者)
再放送は9月21日、午後4時から。さらに10月1日からは、全4話、1話1時間の完全版が放送されることも決まった。
この主人公のモデルとなったのは、群馬県にある障害者の自立支援施設に暮らしている加村一馬さん(69才)。加村さんは恥ずかしそうな表情を浮かべて、自身の半生がドラマになったことについてこう感想を述べた。
「まさか自分のことがこんなふうにドラマになるなんてなあ。人生何があるか本当にわからないよ」
ドラマで加村さんを演じたリリー・フランキー(51才)、社会復帰を支えた世話役の尾野真千子(33才)は加村さんの半生を知り、驚愕したという。ドラマの原作となったのは2004年5月に刊行された『洞窟オジさん 荒野の43年』(小学館)だった。
著者である加村さんが発見されたのは、今から11年前のこと。自動販売機をこじ開けようとしているところを現行犯逮捕され、取り調べの中で壮絶な過去が明らかになった。
刑事裁判では、そうした加村さんの事情が考慮され、執行猶予処分に。そしてそれを機に、釣りを通じて知り合ったAさんのもとで住み込みで働くことを決め、社会復帰への道を歩み始めた。だが、その道のりは決して平坦なものではなかった。