歴史を知ると見えてくるものがある。たとえば江戸時代も人々は現代と変わらぬ「出世競争」に明け暮れていた。
そんなことがわかるのが、今年で10回目を迎える江戸文化歴史検定(江戸検/11月3日実施)。頂点の1級は受検者総数4万2000人中、合格者わずか250人という超難関だ。ここでは、江戸の庶民から“出世”した成功者たちに関する模試に挑戦していただこう。
【問1】日本初のデパートとして知られる三越の前身であり、「現銀(金)掛値無し」の新商法によって江戸最大の呉服屋となった店は、どれでしょう?
(い)長崎屋 (ろ)近江屋 (は)三河屋 (に)越後屋
【問2】私は当時、名門の生まれでないと大役につけなかった歌舞伎界で、浪人の子でありながら芸道に精進し、独自の境地を拓いてついに千両役者になりました。「仮名手本忠臣蔵」五段目の斧定九郎が当たり役で、実悪(真に迫った悪役)の第一人者として知られた私は誰でしょう?
(い)初代市川団蔵 (ろ)初代中村仲蔵 (は)初代市村羽左衛門 (に)7代目市川団十郎
【問3】寛永10年(1633)、拷問を受けて棄教したポルトガル人宣教師は、日本人妻を娶って沢野忠庵と名のり、宗門目明し(役人の手先として捜査・逮捕に協力した者)となってその後20年間もキリシタンの取り締まりにあたりました。遠藤周作の代表作『沈黙』にも登場する、この宣教師は誰でしょう?
(い)ジョバンニ=バチスタ・シドッチ (ろ)ルイス・ソテロ (は)クリストバン・フェレイラ (に)ルイス・フロイス
正解は下に。
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【正解】
【問1】(に)。三井越後屋を営んだ三井高利は伊勢松坂の出身。江戸名物として「伊勢屋 稲荷に 犬の糞」といわれたほど、江戸には多くの伊勢商人がいた。「現銀(金)掛値無し」は、掛け値(本来の値段より高い値段)ではなく公正な価格で、店頭で即金で販売すること。掛け売りが普通だった江戸時代に、大成功を収めた。高利は両替商も営んで繁盛した。日本橋三越本店は創業以来の土地。
【問2】(ろ)。中村仲蔵は日本舞踊の志賀山流家元の養子となり、歌舞伎の世界に入った。門閥のない下働きから出発し、逆境と戦いながら実力で出世し、看板に名前がのる名題役者に上り詰める。仲蔵の成功談は落語「中村仲蔵」にもなっている。
【問3】(は)。慶長14年(1609)ごろ長崎に上陸して関西で布教していたフェレイラは、「天正の少年遣欧使節」のひとりとして知られる中浦ジュリアンとともに、穴吊りの拷問にかけられて棄教(ジュリアンは殉教)。のちにキリスト教批判の書『顕偽録』を著わしたほか、科学書なども執筆して蘭学の発展に寄与した。
※週刊ポスト2015年9月18日号