いまビジネスマンの間で「マッキンゼー式」が改めて人気を集めている。書店のビジネス書コーナーには、マッキンゼー出身者による関連書籍が並び、俄かに盛り上がりを見せているが、それらの“元祖”は経営コンサルタントの大前研一氏だ。マッキンゼーの日本支社長やアジア太平洋地区会長などを務めた同氏が、40年前に世界中の事務所で使われていた分析手法を日本用に体系化し、汎用化したのが、その端緒である。
これまで多くの起業家に影響を与え、有名企業の社員教育プログラムとしても使われてきた「大前式」だが、その中には、サラリーマンの処世術となる慧眼のスキルも多い。新刊『大前語録 勝ち組ビジネスマンになるための88か条』(小学館刊)の中から、その一部を紹介しよう。
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【成績の悪い営業マンほど、売れない理由の説明がうまい】
私はかつて、ある自動車メーカーのディーラーのシェアを回復する仕事を請け負ったことがある。私は全国のディーラーを訪ね歩き、最前線の営業マンに対するインタビューを行なった。
各営業所長に、私から向かって右側に成績の良い営業マン、左側に悪い営業マン、真ん中に平均点の営業マンを座らせるように頼んだ。こうすることで、「売っている人、売ってない人はどこが違うのか?」ということを、3人を比較しながら検討した。
わかったことは、成績の悪い営業マンほど、売れない理由の説明がうまい、ということだった。成績の悪い営業マンは、顧客を相手にする時も、客が商品に対する不満を述べると、待ってましたとばかりに商品の欠点について持論を滔々と述べてしまう。これでは顧客が買う気を起こすはずがない。
【むしろ営業マンにとって大事になってくるのは、「負け方」である】
他社との競争に負ける。これは、営業の宿命である。全戦全勝といかないのが、営業という仕事なのだ。だから、全勝を目指して強引な営業活動をすると、顧客に不快感や不信感を抱かせ、二度と会ってもらえなくなるだけでなく、営業マン自身にとっても時間と労力の無駄ということになる。
営業マンが大事にすべきは、「負け方」なのだ。負けることで逆に顧客との関係を強化し、将来の「勝ち」に繋げることは可能だ。
たとえば、自社の商品が顧客の使用目的とマッチしなかったとしよう。そういう場合は、すぐさま売り込みを中止し、顧客のニーズにあった他社製品を紹介するのも手だ。ポイントは自分が窓口になること。顧客からすれば、自社利益だけを追求せず、こちらの利益を考えてくれている、ということになる。おそらくこの顧客は、将来、また声をかけてくれるだろう。これが、万全の負け方の一例だ。
※大前研一・著『大前語録 勝ち組ビジネスマンになるための88か条』より