1997年の神戸連続児童殺傷事件の犯人・酒鬼薔薇聖斗こと元少年Aが開設した「公式ホームページ」の表題は『存在の耐えられない透明さ』だ。
彼が18年の沈黙を破り、手記『絶歌』(太田出版刊)を出版し、突如世間に姿を現わしたのは今年6月。だが、匿名での出版やAが遺族に知らせていなかったことなどが猛批判を浴びたのは当然の結果だった。
それからわずか3か月。今度は出版社や編集者など、間に人を介することなく、自由に自分の意志を発信する場を作ったのだ。
HPのトップページには、自らのプロフィールと『絶歌』の自己宣伝が記されている。
〈少年A本人が自分の言葉で語ったものは、この『絶歌』が最初で最後です(中略)『冷酷非情なモンスター』の仮面の下に隠された“少年Aの素顔”が、この本の中で浮き彫りになっています〉
犯罪心理学者・矢幡洋氏は言う。
「『絶歌』と同じく、被害者遺族への謝罪は一切なく、反省の意を示す箇所も皆無です。
おぞましい罪を犯した自らの世界観を世間に知らしめて、社会に影響を与えたいという自己顕示欲だけが伝わってきます」
犯罪学者の藤本哲也・中央大学名誉教授はこう分析した。
「Aは『絶歌』を出して批判を浴びた。HP作成はそれに対する反論です。“そうじゃない。ちゃんと読み取れよ! オレのことを理解しろ”という思いを発信したかったのでしょう」
※週刊ポスト2015年9月25日・10月2日号