今どきの学生やモデルが安保法案反対デモに参加することで話題を呼ぶ「SEALDs(シールズ)」。果たして彼らの行動は本当に政治を変えられるのか。同じく安保法案反対の立場ながら、彼らの活動に懐疑的な小林よしのり氏と、彼らの呼びかけでデモに参加した茂木健一郎氏が初対談。SEALDs現象について分析した。
茂木:僕はデモというものはいままで一度も行ったことがなかったんです、集団で行動するのが苦手なので。ただ、SEALDsは個人的に応援したい気持ちがあるので行きました。いろいろいいたいことはあるけど彼らをとりあえず支持したい。
いまの世の中で、SEALDsもいなくて、そのまま安保法案が通るっていうのは、やはりかなり絶望的。僕はそういう意味でいうと、希望っていってもいいのかなと思うんですけど。
小林:ただ、安倍(晋三首相)は何とも思ってないと思うんだよね、デモについて。岸信介内閣のときの60年安保デモでも、岸はそれに屈しないで安保法案を通したことがレガシー(政治的遺産)になったという評価があるでしょう。反対が強ければ強いほど、安倍は祖父である岸に自分を重ねて、「ポピュリズムに屈しなかった宰相として名を残す」と思うようになるだけ。それを自称保守派も熱狂的に支持するだろうし。
デモに参加する若者とか主婦とかが敏感になっているのは理解できるけど、効果がないと思うんだよね。事実、世論調査でも内閣支持率は微減にしかなっていない。安保法案を強行採決してまた多少下がっても、中国や韓国との首脳会談とかであっさりカバーできちゃうと思う。
茂木:実際には法案を止めることはできないと、デモの参加者たちも思っている気がしますけどね。
考えてみれば、戦後の日本で長期政権を担えたのはアメリカ政府の意図に沿った政権以外はないわけで、だから田中角栄さんも鳩山由紀夫さんもダメだった。安倍さんはクレバーだからそこはよく分かっていて、だからこそアメリカ議会で法案成立を約束して帰ってきたわけじゃないですか。
小林:全くその通りだね。
茂木:その小林さんいうところの「恐米保守」のリアリティを国民もどこかで分かっているから、最後は「長いものに巻かれろ」的な結論が見えてしまっている。だから、学者たちが抗議声明を出しても、「しょせんあなたたちも大学に雇われている人でしょ」って感じがあって、なんとなく結末ありきのプロレスに思えてしまう。SEALDsはシールドっていいながら「守られてる感」がないのがいいんだけど。
※週刊ポスト2015年9月25日・10月2日号