芥川賞を受賞したお笑いコンビ・ピースの又吉直樹の処女作『火花』が、発売から約半年で229万部を突破し、本の印税だけで既に3億円は超えるともいわれている。映像化がされれば、さらに収入は増えるはずだが、かつては多くの作家が長者番付にランクインした。
1977年度には作家の森村誠一が10位にランクインした(申告所得額=6億2264万円)。森村は『人間の証明』が第3回角川小説賞を受賞(1976年)し、1977年には松田優作主演で映画化。翌1978年には『野性の証明』が高倉健主演で映画化されるなど、映画と書籍がタイアップした企画で一世を風靡した。
森村が10位に入る前年度の1976年には、松本清張が20位(同3億3461万円)、司馬遼太郎が21位(同3億3032万円)、さらに横溝正史が22(同3億2825万円)位と作家が3人もトップ30入りしている。
1983年度は赤川次郎が20位に入った。翌1984年度は書き下ろしだけで20冊、文庫27冊もの作品を手掛け、8位(同8億6100万円)にまで上がった。経済ジャーナリストの福田俊之氏がいう。
「『三毛猫ホームズ』や『三姉妹探偵団』などのシリーズ物が大ヒットし、1984年度以降、3年連続でベスト10入りしています。印税収入でこれだけ稼いだことに驚かされました」
かつて作家はヒット作に恵まれれば億万長者になれる職業だったが、1994年、赤川が100位に入ったのを最後に、それ以降、作家が上位に名を連ねることはなくなった。(文中敬称略)
※週刊ポスト2015年9月25日・10月2日号