多くの巨人ファンは「プロ野球選手は誰もが一度は巨人でプレーしたいと思っている」と信じて疑わない。「あの選手が欲しい」ではなく、「アレもいずれ巨人に来る」というトンデモ理論を組み立てている。もちろんそれは今季活躍している選手たちにも当てはめられる。
妄想は得てして大きくなるものだ。ファンは、まだFA権を取得するまでには間があるものの、本人に確かな“ジャイアンツ愛”を感じられる選手たちの入団の日をもう待ちわびている。
例えば、山田哲人(23・ヤクルト)。もはや説明不要、トリプルスリー達成確実のセ・リーグを代表するスラッガーである。
大阪・履正社高出身だが、「子供の頃からの巨人ファン」というのは(巨人ファンの間では)有名な話。
「長野(久義)さんや二岡(智宏)さんのような(右方向への)バッティングを身につけたい。目標は坂本(勇人)選手。いずれ坂本さんと二遊間を守りたい」
と、巨人ファンにとってはご飯が何杯でも食べられそうな発言を残している。
FA権取得までにはあと5年を要する。それにメジャーも放ってはおかないだろう。だが巨人ファンはポジティブだ。
「山田が入れば、仁志(敏久)以来固定されていなかった巨人の『正二塁手問題』が解消する。メジャー? 日本人内野手は難しいよ。球界のためにも、山田は巨人に来るべきだね」(60代男性ファン)
巨人の利益=球界の利益という、巨人ファンならではの理屈である。
お次は、柳田悠岐(26・ソフトバンク)。こちらもトリプルスリー確実なホークスの中心打者である。
広島経済大出身でFA権取得は早くて3年後。しかも本人は、広島市民球場に通って応援をしてきた筋金入りのカープ党だ。だが、巨人ファンはそんなことはまったく気にしない。
「カープ人気なんて一過性のものだし、あの貧乏球団が柳田に満足に年俸を払えるとは思えない。それに強豪球団で活躍してきた選手が弱小球団に行く必要はない。巨人の選手なら広島にもちょくちょく里帰りできる」(50代男性ファン)
そして、話は森友哉(20・西武)にも及ぶ。森は大阪桐蔭高出身の2年目。柳田と同じくフルスイングが魅力で、大きな潜在能力を感じさせる。阿部慎之助の衰えによる正捕手問題を抱える巨人には、この存在が眩しい。
だがファンはすでに、森の背中に「ジャイアンツ愛」を見いだしていた。なぜなら森が背番号10を選んだのは、憧れの選手が阿部だったことが理由だといわれているから。巨人ファンは森が、憧れの阿部の後継者として10番を背負う日を夢見ている。
※週刊ポスト2015年9月25日・10月2日号