2014年4月に消費税率が8%に引き上げられたが、今度は2017年4月に10%引き上げられることが決定している。とはいえ、予定通り増税が実施されるか否かは、時の政権次第の面もある。今後の日本経済の行方について、経済アナリスト森永卓郎氏が解説する。
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安倍政権がこれまで高い支持率を得ていた最大の要因は日本経済の好調さでした。これは、少なくとも2015年度中は継続すると見ています。
4月以降、消費税引き上げの影響が一巡し、2015年度の消費者物価の対前年度上昇率は限りなくゼロに近づく。一方で、賃金上昇率は昨年を大幅に上回っており、5月の物価変動の影響を除く実質賃金指数は前年同月比で横ばいとなり、2013年4月以来、25か月ぶりにマイナスを脱しました。今後もプラス基調が続くと思われ、2015年度の実質所得はプラスになることが確実視されます。
ただし、政治的には安倍政権の支持率が急落し、不透明感が増しています。しかも、今後、安倍政権の支持率をさらに下げそうな要因が目白押しです。
安保関連法案は国民から大きな反発を買っています。原発の再稼働問題も同様です。政府がコメなどの「聖域5品目」は指1本触れさせないといっていたTPP(環太平洋経済連携協定)交渉も想定通りには進んでいません。さらに、普天間基地の辺野古移設もまだまだこじれそうです。
そうした中、来年7月には参院選が待ち構えている。現状、長期政権を標榜する安倍晋三総理が参院選に勝つために打てる起死回生の手はただ1つしかないと思います。それは、参院選の数か月前に、2017年4月からと決まっている消費税の再引き上げを「再び凍結する」と表明することです。私は、その可能性は十分にあると考えています。
※マネーポスト2015年秋号