会話が聞こえにくい、キーンという高音が耳に響いて眠れない……高齢者にとって、難聴と耳鳴りの悩みは深い。埼玉医科大学保健医療学部教授・和合治久氏が語る。
「加齢に加えて、ストレスの多い現代社会は自律神経のバランスが乱れがちです。結果、リンパの流れが滞り、音の周波数を聞き取るセンサー(有毛細胞)がうまく働かなくなり、難聴や耳鳴りを招きやすくなる」
そんな症状を改善させるとして注目を集めたのが、健康雑誌『壮快』10月号(マキノ出版)の付録「快聴CD」(約24分)だ。
「2年ほど前にも同様のCDを付けたところ、CDを聴いた読者から『耳がすごく良くなった』という電話がありました。読者ハガキが多数寄せられたこともあり、第2弾を企画したんです」(『壮快』の小川潤二編集長)
CDを開発したのは、音楽による聴覚トレーニングを実践している傳田聴覚システム研究所の傳田文夫氏である。傳田氏がいう。
「耳の健康のためには幅広い音域を聴くことが大切ですが、都市で生活していると3000ヘルツ以上の高周波音を聴く機会があまりありません。そこで裏磐梯や伊豆高原まで行き、高周波音である虫の音や鳥のさえずり、川を流れる水音などを収録しました」
CDはステレオ方式で再生できる機器を使い、ヘッドホンやイヤホンで聴く必要がある。これには理由がある。
「単に自然の音を収録しているだけではなく、脳に刺激を与えるために、音を突然左右に移動させたり、途切れさせたりしています。このように神経に作用するCDは他にありません」(傳田氏)
『壮快』10月号には、4人の男女を被験者にした実験結果が掲載されている。いずれも短時間で聴力がアップ。耳鳴りによる不眠も解消されたという。そのメカニズムを前出・和合氏が解説する。
「耳の構造上、周波数の高い3000~4000ヘルツの音を豊富に持つものが副交感神経にスイッチを入れやすい。さらにその音と音がぶつかり合うことで、8000~1万2000ヘルツという高い音が生まれ、聴いた人は誰でも副交感神経にスイッチが入ったことを感じられるようになる。例えば唾液が出てくる、血圧が安定する、からだがポカポカして温かくなってくる。好き嫌いに関係なく、人間はその音の要素に生理的に反応するようにできているのです」
聴く回数は最初は1日1回を目安にし、10日間が過ぎたら週に1~2度と頻度を落とすのがいいそうだ。
※週刊ポスト2015年9月25日・10月2日号