野村克也氏と江本孟紀氏、黄金時代の巨人を知る、南海ホークスの伝説のバッテリーが急遽集結し、原辰徳監督が率いる今の巨人の病巣を突いた。そして、話はファンの姿勢にも及んだ。
──原監督の契約は今年で最終年です。
野村:辞めないだろうね。原に最下位のチームをやらせればいいのにな。力量がわかるよ。手前味噌だが、オレが立て直した4球団はすべて元は最下位だった。
江本:最下位は下がいないから気が楽ですもんね。
野村:その嫌味は新聞記者によくいわれたよ(苦笑)。
──野村監督が今の巨人を再生するなら?
野村:なんでそんなしんどいこと考えなきゃいかんの。
江本:打順は固定したほうがエエでしょう。
野村:そうやな。打順のイー(1)スー(4)チー(7)は変えちゃいけない。麻雀みたいだが、7番は第二の4番、クリーンアップから攻撃が始まると7番がキーになることが多い。巨人の4番? 考えたこともないが阿部(慎之助)でいいんじゃない。
江本:僕もそう思います。
野村:それにキャッチャーのままで良かったよ。
江本:しかし最近、球場に行くと気持ち悪いんですわ。しょうもない試合ばっかりなのにお客さんがわんさか来るでしょう。
野村:あれは不思議だよな。東京ドームはよう入っとる。ある意味、お客さんが甘やかしているのかもな。
江本:昔のファンは弱いと球場に行かなかったですからね。それに観に行っても、大量リードされると6回、7回で帰っていた。
野村:そう考えるとON(王貞治・長嶋茂雄)は凄かった。10-0で負けていても、9回にONに回ることがわかっていたら、ファンは絶対に帰らなかったからね。特に長嶋は偉かったよ。日米野球のときに「疲れているだろうから休ませてもらったら」というと、長嶋は「僕を見に来てくれるファンがいるから」といった。オレ自身の甘さを感じると同時にプロだなと思った。こういう選手が出て来ないとダメですよ。
江本:今は勝っても負けても、ファンがサッカーみたいな応援して飛んだり跳ねたりして試合終了までいる。野球云々じゃなく、球場に来ることが目的になっているんでしょうね。それに選手が痛くもない死球で大袈裟に倒れてベンチに引っ込んで、治療を終えて出てきたらワーッと拍手喝采。甘やかしたらダメ。ファンも厳しい目を持って、しょうもない試合しとったら観に行かんぞ、くらいの危機感を選手に与えないと。
※週刊ポスト2015年9月25日・10月2日号