背骨には脊柱管(せきちゅうかん)という空洞があり、そこを神経の束が通っている。しかし、加齢とともに腰椎(背骨の腰の部分)が変形すると、脊柱管の中の神経が圧迫され、足腰の痛みやしびれ、細切れにしか歩けなくなる「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」などを引き起こす。それが「脊柱管狭窄症」で、国内の患者数は約240万人にものぼるという。
健康雑誌『わかさ』4月号(わかさ出版)が掲載した、脊柱管狭窄症患者512人を対象にしたアンケートでは、60代以降に発症した人が76%を占めたが、50代で発症した人も22%いた。しかも一度に歩ける距離は「200メートル未満」と答えた人が大半で、症状の深刻さがうかがえる。
悪化すれば鎮痛薬や血管拡張薬、温熱療法、通電療法、神経ブロック注射などによる治療を受けることになるほか、手術が必要となるケースも少なくない。清水整形外科クリニックの清水伸一院長が話す。
「薬を処方されても治らない人がほとんど。根本の原因である体全体の歪みを正さないかぎり、決まりきった治療法では回復は難しいのです」
そこで清水院長が同誌で紹介したのが、「おなか脱力腰回し体操」だ。口から息を吸いながら腹部の体幹筋の力で下腹をへこませ、吸いきったところで鼻から息を吐き出すと同時に一気に下腹の力を抜く「腹ペコ脱力」。股関節を支点に5~6秒、足をブラブラ動かす「足ブラ脱力」。腰を回して円を描き、円の前半部分では吸いながら腰周辺の筋肉に力を込め、後半部分では鼻から息を吐き出すと同時に一気に脱力する「腰ブラ脱力」。
この3種類の脱力体操をそれぞれ1分ずつ行なうだけで、症状が大きく改善するという。
「体が前かがみになると全身の重心がズレてバランスが崩れ、その歪みやひずみが原因で腰の一部に負担がかかり、脊柱管狭窄症を引き起こす。治療には姿勢を正すと同時に、姿勢を保つための体幹筋を活性化することが必要です。高齢者の場合、筋肉を鍛えようとするとかえって危険なので、前かがみの姿勢を起こしてリセットするだけで十分です」(清水院長)
『わかさ』4月号のアンケートによれば、この体操を3か月続けた脊柱管狭窄症患者43人のうち、29人(67%)の症状が改善したという。
「1日3回、朝昼晩。歯磨きのように習慣づけることが大切です」(清水院長)
シニアに限らず、デスクワークが長く、猫背になりがちな人も試す価値がありそうだ。
※週刊ポスト2015年9月25日・10月2日号