今年の巨人はパッとしない。開幕前は阿部慎之介をファーストにコンバートし、小林誠司と相川亮二を捕手に据える予定だったが、結果的に阿部を捕手に戻すなど捕手が安定しない。黄金時代の巨人を知る南海ホークスのバッテリー・野村克也氏と江本孟紀氏が捕手の重要性について語り合った。
江本:いいキャッチャーの条件って何ですかね。
野村:肩が強いかどうかが一番やな。配球術は難しくても数学の問題を解くのと同じで定義がある。それを理解すれば成長する可能性はゼロではない。
──小林(誠司)は肩がいい。
野村:肩が強いなら育てがいがあるが、大学出か?
江本:同志社ですね。
野村:致命的だな。大学出に名捕手はいない。
──阿部(慎之助)も大卒です。
野村:ありゃ迷捕手だ。ピッチャーとキャッチャーは高校を出てすぐプロに行くべきだね。18歳から22歳は一番大切な時期。基礎知識がどんどん吸収されて、野球が分かってくる。ここでアマの指導者から、結果論で間違った指導をされるとダメになる。キャッチャーを育てるには結果にはしばらく目をつぶり、根気強く基礎・基本を教えるしかない。「根拠のないサインは出すな」「迷ったら原点の外角低めに投げろ」とオレは教えてきた。
江本:いいキャッチャーはピッチャーも育てます。僕もノムさんに「なぜこの球を要求されたか考えてから投げろ」と教えられました。そういえば、南海のキャンプで、ノムさんに指示されてブルペンでキャッチャーをやらされましたよね。
野村:やったな、そんな練習(笑い)。
江本:実際に自分で受けてみると、お互いの気持ちがわかっていい経験になりました。面白かったなァ。試合でキャッチャーをやってみたかった。
野村:お前みたいに足の長いヤツじゃアカンやろ。
江本:(野村氏をじっと見ながら)胴長短足でないとダメですかね。
野村:それに鈍足(といって遠い目をする)。
※週刊ポスト2015年9月25日・10月2日号