長者番付は時代を映す鏡である。現在はIT企業の起業家たちが上位を占めるが、1980年代は相場師とバブル紳士が勃興した時代だった。
1986年度の長者番付では、大都市の地価高騰から、土地長者が続出。上位100人のうち、72人が土地長者となった。1987年度は、世間では無名の土地長者がベスト10を独占した。
1位の北見創・北見木材社長は、東海道新幹線・新横浜駅周辺の土地など1500平方メートルを69億円で売却して高額所得を得たという(所得税額・21億1175万円)。
1988年に東京の地価は、前年比68.6%も上昇して史上最高を記録した。その年も土地長者が1位になった。戦前に神戸に来日したレバノン人で、貿易会社日本法人の代表を務めたアブダル・ハディ・デビスだ(同68億5404万円)。居を構えていた東京・渋谷区の宅地8600平方メートルをおよそ430億円で売却したことによるものだ。
「1980年代後半にはバブルマネーが地方にも流入し、大手生保や建設会社が地方中核都市の土地を買い漁り、地価を高騰させた」(経済ジャーナリスト・福田俊之氏)
仙台市内屈指の繁華街にあった土地の売却益で不動産貸付会社社長の岩井久雄が1989年度の1位になったことは象徴的だろう(同32億3845万円)。
(文中敬称略)
※週刊ポスト2015年9月25日・10月2日号