安倍晋三首相の無投票再選で存在感がなくなる一方の現職政治家を尻目に、元気すぎるくらい元気なのが“引退”したはずの面々だ。議席を持たないが一家言持つ重鎮のセンセイ方が安保法案の賛否をめぐり、古巣の政界へ「喝!」を入れる。
島村宜伸・元農水相(81)は安保法案には賛成の立場だ。
「亀井さん(静香・元政調会長/78)から安保反対の会に誘われたが断わりました。法案には賛成だからね。私は中曽根(康弘)防衛庁長官の大臣秘書官を務めたこともあって、今も米軍関係者と交流がある。彼らは法案に非常に理解を示しているわけです」
とはいえ自民党に不満がないわけではない。島村氏の選挙区(東京16区)から当選した大西英男氏が党内の勉強会で「マスコミを懲らしめるには、広告料収入がなくなるのが一番」などと発言したことについて、「国会議員になって間もないとはいえ、政治家の基礎がないんだ」と苦言を呈す。
安保法案に賛成なのは、「原爆投下はしょうがない」発言で物議を醸した久間章生・元防衛相(74)も同様。久間氏は2014年7月に国際平和戦略研究所を設立。同研究所関係者によると、「東南アジアなどによく行って、各国の防衛関係者と懇談している。今も超党派議連で若手に安保法制関係の指導をしている」という。政権支援の立場か。
安保法案を機に、しばらく見なかった老政治家が再登場した例も少なくない。
細川政権時代に小沢一郎氏との「一・一ライン」で政権中枢を支えた市川雄一・元公明党書記長(80)がその一人だ。読売新聞(8月9日付)の〈安保法制 自衛に不可欠〉と題されたインタビューでは、
〈米中露といった軍事大国以外、一国で自らを守ることは不可能だ。戦争を抑止するには、どこか強い国と組み、「攻撃すれば手痛い目にあう」と分からせ、思いとどまらせるしかない〉と発言している。
一方、御年85歳の不破哲三・元共産党中央委員会議長は、今も党中央委員会常任幹部会委員を務めるが、昨年の衆院選では京都と沖縄で9年ぶりに街頭演説。今年7月には4年ぶりにテレビ出演して安保法案を批判した。
「党員たちは『不破さんがまた出てきてくれた』と感動しています。共産党でカリスマ性を持った指導者は宮本顕治さんと不破さんの2人だけです」(党関係者)
一時はカリスマ的人気を誇った田中真紀子・元外相(71)も、毎日新聞の読者投稿欄に〈『新国立』政治家は責任取れ〉と題した文が掲載され話題となった(8月22日付)。
〈都合の悪いことは官僚に押し付けて、リーダーシップを取るべき政治家たちがほっかむりし、事なきを得ることは断じてあってはならない〉と述べている。“後輩”にあたる下村博文・文科相のふがいなさに怒りが爆発したようだ。
※週刊ポスト2015年9月25日・10月2日号