実は野々村氏は現役美術教師時代、県警の捜査官を対象に似顔絵の描き方について研修を20年以上にわたって行ってきた実績がある。やくざ監督と呼ばれても警察をお世話していたのである。ちなみにポスター出演はノーギャラである。
ポスターの着物はもちろん自前。撮影に際しては、
「暴力団追放だから笑顔じゃないだろうと思って、『近寄ってくるな!』という気迫込めて表情も作りました」
ポスター制作の話が公になると、さっそくかつての教え子たちから「1枚ほしい」と希望が殺到しているそうだ。
最後に気になるのは野々村氏の去就だ。監督時代、コワモテのビジュアルとは裏腹の親しみやすい人柄に接して、ファンになった高校野球の記者は多い。実は私もそのひとりだ。また一度、甲子園で采配を振るうことはないのだろうか。
「いやあ、もうその考えはないですね。舌禍事件を起こしたあと監督に復帰するとき、生徒が袖に『漢の花道』と刺繍したお揃いのTシャツを作って待っててくれた。そして最後は甲子園に連れて行ってくれた。監督として最高の花道を飾ってくれたので、もう未練はありません」
どうやらファンはポスターを眺めて満足するしかないようだ。