イキる、とは調子に乗る、勢いづく、威張る、偉そうにするなどの意味。吉本新喜劇・座長の小籔千豊(こやぶ・かずとよ)は「イキる奴」が嫌いだという。小籔が高齢者について語る。
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9月と言えば、敬老の日があります。この日は、おじいちゃんやおばあちゃんとか目上の人を敬い感謝する日ですよね。
僕が小学生の時におじいは死にましたけど、大正生まれのおばあは幸いまだ生きています。ただ、もうリーチかかっているからせめても、ってわけじゃないですけど、ちょっと時間が空いたときや地方ロケに行ったときは、デパ地下や土産物屋で食べ物なんかを買って贈り倒すようにはしてます。
なんでそうするようになったかというと、若い頃、僕は借金まみれなのに高い飯を食いに行ったり、パチンコや競馬ばっかりして、オカンにも何もせんかった。それこそ甘いもんひとつ持って行くことも。
当時、居酒屋でたまたま会うたおっちゃんらから「親孝行しとけよ」なんてよう言われてました。「親孝行したい時に親はなし」「いつまでもあると思うな親と金」なんて言葉は知ってたけど、それでも僕は全然親孝行しなかった。
自分が結婚して3年目くらいでオカンが死んだんですけど、その頃僕は貧乏で何もできず、ほんま自分はアホやなと思ったんです。「あれだけ言われてたのに、せえへんってどういうことやねん、自分」って弱っていく母親を見てすごく後悔しました。
僕も結婚して子ども産まれて親が死んで、新喜劇の座長になって、「先人に感謝を」みたいな気持ちが昔より強くなりました。おじいやおばあ、親はもちろん、新喜劇の先輩たちなどの先人たちが頑張ってくれたから、今の僕があるし、おかげで僕の子どもたちも大きくなれたわけで。
ぜひみなさんも親がご存命なら「今のうち親孝行しとけよ」と言いたいんですが、僕もそうだったように他人からいきなり言われても、まあ聞けへんと思うんですよ。だから僕からは、
「僕は『親孝行しとけよ』と言われたけど、せえへんかってめっちゃ後悔したからしときや」
と言わせてもらいます。それは親を喜ばすためだけじゃなくて、「親が死ぬときに孝行できなかったことで、自分が後でヘコまへんようにしたほうがいい」というためでもあるんです。