人気テレビ番組『クレイジージャーニー』(TBS系)で話題のフォトグラファー佐藤健寿さん。世界中の奇妙なものばかりを撮った『奇界遺産』や、監修を務めた『世界の廃墟』は、写真集としては異例のベストセラーとなっている。軍艦島の世界遺産登録もあり、今またじわじわと人気を集めている「廃墟」事情や、新たに発売した本邦初の本格的人工衛星写真集となる『SATELLITE』(朝日新聞出版)について聞いた。
――90年代のブーム以降も廃墟人気は根強く続いていますが、なぜ人は廃墟に惹かれるのだと思いますか?
佐藤:最近になってまた再流行している感じはありますね。今年の初めに出した「世界の廃墟」(飛鳥新社)もおかげさまで三刷となりました。90年代後半から廃墟のイメージというのは余り変化がなかったんですが、最近になりまた訪問する人が、特に若い人で増え始めているのかなと。世界的に、90年代の廃墟イメージが現代のゲームなどにも転用されて、今の若い人たちにいわばネタ元として再発見されているような節もあります。海外でいえば、人気ゲーム「サイレント・ヒル」のモデルになったゴーストタウンのセントラリアとか。
あとは単純に、ネット発の旅行ブームみたいなこともあるのかなと思います。2000年ぐらいからネットが普及して、10年経ったところでネットやスマホの弊害を感じ始めたり、みんながモニターの中で完結する世界に疲れてきているのはあると思います。海外旅行会社のデータでは、旅行人口は減っているそうですが、いわゆる絶景本は売れているという奇妙な矛盾があります。
それは多分、みんなが旅行会社で大文字の観光地に行かなくなっただけで、安価で人とかぶらない個性的な旅行をしたい、という要求が高まっているのかなと。その行き先として、廃墟や奇界遺産が注目されているというのは、旅行会社の人にもよく言われます。驚いたのは、廃墟の本を買う人は女性もすごく多いことですね。廃墟には非日常の世界を見ているような興奮があって、しかも、わりと安全に行けて、観光地にはないドキドキもある。そういうプチアドベンチャーみたいなものをみんなが求めているところもあると思うんです。