視力が衰えて遠くが見えなくなったうえ、老眼が進んで手元も見にくい。「新聞を読んだり、爪を切ったりするのもひと苦労」という人は少なくないだろう。
そんな目の衰えに悩む中高年読者から大反響を呼んだのが、健康雑誌『壮快』5月号の付録「視力向上フリフリカード」。考案者は、福井県に住む野辺龍一さんという80代の男性だという。
「ある時、新聞を目の前で左右に振ってみると、不思議なことに以前よりも文字が読みやすくなったそうです。野辺さんは試行錯誤を繰り返して独自の老眼矯正のトレーニングを確立し、補助具を作成しました。それを『壮快』だけのオリジナルデザインで付録にしたのです」(同誌の小川潤二編集長)
「フリフリカード」には視力検査表にあるマークがバラバラに印刷されている。これを目から15センチほど離し、顔の正面で左右に振るだけで視力が改善するという。そのメカニズムをほんべ眼科の本部千博院長はこう説明する。
「フリフリカードを目の前で動かすと、それを見ているだけで周辺視野が刺激されます。視覚を司るのは脳の後頭部にある後頭葉で、物がよく見えたり見えなかったりするのは脳のこの部分の働きによるもの。普段は使っていない周辺部が刺激されると、脳にも多くの刺激が行き渡り、見えやすくなると考えられます」
とくに老眼や近眼のメガネをかけている高齢者の場合、普段から周辺視野が狭くなっているため、「フリフリカード」による刺激はより効果的だという。
「0.8くらい視力のあった80代の男性患者さんが、『急に視力が落ちて見えにくくなった』といってうちの病院に来たことがありました。待合室でフリフリカードをやってもらっていたんですが、診察の時にはもう視力が戻っていて、『これはすごい』とびっくりしました。
視力が落ちた原因は人それぞれなので、誰にでも同様の効果があるとは限りませんが、ある程度の視力向上効果は期待できると思います。効果を持続するためには、継続することが大切ですね」(本部院長)
「フリフリカード」の使用は1日1回、1分以上が目安。カードとの距離が近く、振る回数が多いほど効果的だが、「最初から無理をすると目が回ったり、気分が悪くなることもあるので、慣れるまでは慎重に取り組んだほうがいい」(本部院長)とのアドバイスを忘れずに。
※週刊ポスト2015年9月25日・10月2日号