高齢者の健康のためには、外出をいとわず、さまざまな人とコミュニケーションをとれるようにすることも大切だ。そのためにも玄関まわりの片付けは欠かせない。
「加齢によって筋肉や関節が衰えてくると、足を大きく上げたり物を避けて歩くことが難しくなります。そういった意味で、玄関は高齢者にとって鬼門ともいえる場所で、そこを通ることが億劫になれば、外出の回数が減ります。きちんと片付けておけば外出しやすいし、救急搬送の際にもストレッチャーがスムーズに入ることができ、災害などで避難するときも安心です」(介護博士の高室成幸氏)
玄関の片付けの基本はできるだけ物を置かないこと。
「普段履かない靴は下駄箱にしまい、杖は下駄箱などにぶら下げ、鍵もキーボックスを壁面に設置して収納。傘立てやシルバーカーなどは玄関ドアへの動線を遮らない場所に置きましょう」(高室氏)
ただでさえ玄関には使わない物が多い。重くて運ぶのに苦労するしょうゆやサラダ油、缶詰、贈答品、ミネラルウオーターなどがそのまま玄関に置きっぱなしになっているのは高齢者宅ではよくあることだが、危ないのですぐに片付けてしまおう。なお、玄関マットやラグもつまずいたり、滑りやすいので取り外しておきたい。スリッパは滑りやすいので使わない。
足を上げるのがつらくなってきたら、玄関の段差部分に、ちょうど2分の1の高さになるような踏み台を設置して上り下りしやすくするといい。廊下に危険などなさそうに感じるかもしれないが、住居内の事故を行動別にみると、65才以上の場合は“歩いていたとき(階段の昇降を含む)”に最も多く発生している。高齢者にとっては、室内を歩くことにも危険がひそんでいる。
廊下はベッドからトイレや浴室へ行くときに通る重要なルート。この動線上を確認し、床に物を置かないことが鉄則だ。さらに体格や動きに合わせて手すりやフットライトを設置し、明るさを確保しよう。
廊下や階段の片付けでは、次のようなポイントもある。
●スリッパは滑りやすいので使わない。もし必要なら滑り止めつきルームシューズに。
●廊下などで無造作に床に這った電気コードはつまずくので大変に危険。壁に沿わせて必ず固定すること。
●階段の幅を狭くするように荷物を置くのはNG。
●階段の踏み外しを防ぐため、踏み面の端に蛍光タイプの滑り止めテープを貼る。
※女性セブン2015年10月8日号