アニメ映画『GAMBA ガンバと仲間たち』(10月10日公開)が公開前から話題を呼んでいる。脚本を、アニメ脚本初挑戦の古沢良太氏が手掛けたことでも注目を集めている。売れっ子がどんな脚本を作り上げたのか? 試写をチェックしてきたというコラムニストのペリー荻野さんが綴る。
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まもなく公開されるアニメ映画『GAMBA ガンバと仲間たち』。構想15年、製作費20億円、製作は『ALWAYS三丁目の夕』の白組、エグゼクティブ・プロデューサーは『スパイダーマン』『X-MEN』」のアヴィ・アラッドなどなど壮大さに目がくらみそうだが、私が注目したのは、この映画の脚本を古沢良太が担当しているということだ。
古沢といえば、テレビでは、ループタイを愛用する中学教師(長谷川博己)が微妙な本音をつぶやき続けた『鈴木先生』、毒舌弁護士(堺雅人)が法廷でしゃべり倒して勝利を勝ち取る『リーガルハイ』、恋愛志向ゼロの国家公務員女性(杏)の婚活奮闘記『デート~恋とはどんなものかしら~』など話題作を連発する超売れっ子脚本家。その古沢が、児童文学の名作にして、自身も大ファンというアニメでも親しまれた作品をどう映画に仕上げるのか。さっそくチェックしてきた。
物語は、街ネズミのガンバが、食いしん坊のマンプクとともに海を見たいと港に走り出すところから始まる。島ネズミのこども忠太から島ネズミが恐ろしいイタチに襲われ、皆殺しにされそうだと聞いたガンバは、船に乗り込み島へ向かう。しかし、敵は伝説の白い悪魔といわれるノロイが率いる残虐なイタチ集団。ガンバ、マンプクとともに戦う決意をしたのは、親分肌のヨイショ、知識豊富な参謀ガクシャ、心優しいボーボ、度胸がある博打打ちのイカサマ、四匹の船乗りネズミのみ。島に渡った六匹&島ネズミとイタチたちの壮絶な闘いが始まる。
弱い者が力を合わせ、知恵と団結力で強敵に挑む。冒険物語の王道にして、日本人が昔から大好きな展開だ。ネズミの十倍以上も体が大きい凶暴なイタチは、鋭い牙や爪で殺戮を繰り返す。敵は同情の余地がない悪役。善悪がはっきりしているところも王道だ。私のような時代劇好きには、こたえられない場面の連続だった。しかも、よく聴いていると、「あたぼうよ!」「ネズミの中のネズミよ!」などとちょっと時代劇的なセリフもちらほら。ここ一番のときに頼りになるアウトロー、サイコロを手にしたイカサマの「この賽の目に従ったまでよ」なんてセリフにはしびれた。古沢脚本、今回もやってくれる。
以前、『リーガルハイ』について話を聞いたとき、社会派ドラマではないが、弁護士を主人公にした以上、「正義って何なんだ」ということは毎回念頭に置いていると語っていた。妙な髪型の堺雅人が「自然なんてクソくらえ」「やられてなくても、やり返す!」「彼女の正体は不細工なんです」などと言い放つ姿や、なんでもできる執事の服部さん(里見浩太朗)とのやりとりをへらへら見ていた私は、「正義を」という直球目線を持つ脚本家を前に、思わず「すみません」と心の中で頭を下げた。
思えば『デート』も変化球に見えて、芯は直球のラブコメだった。変化球に見せて直球を投げる古沢が、『GAMBA』では、堂々と直球を投げた。ナイスピッチングだった。