下痢止め、頭痛薬、抗うつ薬、やせ薬、勃起不全治療薬……。ここ数年、ヨーロッパを中心に中国産ニセ薬の摘発が相次いでいる。昨年4月にはフランスで中国から輸入された「中国茶」のコンテナから数百万錠が押収された。いずれも、既存製品の「模造薬」ばかりで、有効成分が全く含まれていないものや、有害物質を含むものまであった。
中国産ニセ薬のなかでも広く出回っているのは偽バイアグラだ。本物に似せるため、錠剤を青く着色するのにペンキや床用洗剤の成分が使われていたものもある。
その危険性を知っているのは誰より作った本人だ。今年3月、北京で警察当局が心臓病のニセ薬製造現場を捜索した際、現場で容疑者の一人が心臓病の発作を起こした。ところが、自分たちの作ったニセ薬を「死んでも飲まない」と拒否したという。
日本へも、個人輸入代行業者を通じて中国のニセ薬が流入している。精力増強や痩身効果を謳う「健康食品」の中には、医薬品成分が見つかるケースがあるという。そうした製品の取り締まりのため、厚労省では店舗や個人輸入サイトで販売されている製品について、買い上げ調査を実施。厚労省医薬食品局監視指導・麻薬対策課の日下部哲也氏が語る。
「2012年のネット販売製品の調査では、中国名が付いたものが多く見つかりました。さらに、109製品中56製品から医薬品成分が検出されています。強壮用健康食品と銘打っている物の中には、シルデナフィルというバイアグラの成分が入っているものが多く見つかっています」
それらを服用すれば、医薬品成分などに起因する頭痛、動悸、胸痛、ほてりなどの健康被害を起こす可能性があるため、厚労省は個人輸入を控え、使用しないように注意喚起を行っている。
ところが、現在もネットを見れば中国から「精力サプリ」「ダイエット薬」「催淫剤」「アトピー対策薬」などを個人輸入する代行業者が乱立している。飲んだら危険なニセ薬から身を守るには、怪しいサイトに近付かないなど、自己防衛が欠かせない。
※SAPIO2015年10月号