深夜0時、JR新富士駅と静岡駅との間にある東海道新幹線の蒲原トンネル内。ヘルメットを着用した約20人の保守作業員が、約6mの高さの足場をあっという間に組み上げていく。ここで行なわれているのは、トンネルのコンクリート裏側にできた空隙を埋める作業。東海道新幹線走行時の振動などによるひび割れの進行を防ぐためだ。
昨年、開業50周年を迎えた東海道新幹線では現在、東京~新大阪間にある高架橋やトンネル、鋼橋の「大規模改修工事」に取り組んでいる。工期はなんと10年。今年は3年目にあたる。
「日々の点検や補修で安全性は保っていますが、将来に起こりうる構造物の経年劣化を危惧し、対処法を長年検討してきました。当初は鋼橋を架け替える案もありましたが、それには長期間にわたる部分運休や徐行が必要。
1日に約43万人ものお客様にご利用いただく東海道新幹線を止めるわけにいかず、架け替えと同等の効果を発揮する補修工法を10年かけて開発しました。この新工法により大規模改修工事に挑めたのです」(JR東海施設部工事課・古谷課長代理)
将来的な経年劣化を防ぎ、土木構造物を延命化するための作業を施すなど、のべ約2000人の保守作業員が従事する工事の多くが最終列車通過後に実施。「世界一安全」といわれる陰には、鉄道マンたちの知られざる仕事があったのだ。
撮影■渡辺利博
※週刊ポスト2015年10月9日号