10月3日に公開された映画『罪の余白』で、子供を亡くした父親を熱演している内野聖陽さん(47才)。作中ではシリアスかつ苦悩する役柄を演じたが、一体どんな思いで撮影に臨んだのか。そしてその素顔とは――。
(取材・文/活動屋映子)
「いやあ、気恥ずかしいですね。ドラマなら役になって演技できますが、写真だけというのは苦手です。恥ずかしいなあ~不安ですよ」
と、照れ笑いしつつも、カメラに挑むようなポーズをしたり、腕まくりをしたり。本人は照れ隠しのつもりらしいが、なんともチャーミング。
主演映画『罪の余白』で、内野が扮する安藤聡は、行動心理学を専門とする大学教授。妻亡きあと男手ひとつで娘を育てている。その最愛の娘の突然の死によって、平穏な日常が絶たれ、自らも追いつめられていく。まずは、映画の話から。
──映画の父親像と目の前の内野さんのギャップに戸惑っています。
「えっ!? そうですか~? 人って状況によって変わるんじゃないですかね。ぼく自身、いったい自分とはどんな人間なのか、決めつけることもできないですし…」
と、意外そうな表情を浮かべつつ、お茶をひとくち飲む。
──映画の中の人物と、つい混同してすみません。内野さんは役を引きずるタイプでしょうか。
「引きずることもありますね。今回はつらくなりましたし」
小さな笑いをはさんで、主人公の人物像について語る口調が、静かに熱を帯びていった。
「最初にシナリオを読んだとき、心の襞がしっかり描かれていて、単純に面白いと思ったんです。だけど、撮影に入ると張りつめていくものがあって、自分でも怖いと感じることもありましたから」
──行動心理学者なのに安藤は冷静さを失っていく。見ていてちょっと、もどかしさを感じてしまいましたが。
「そうですよね。ぼくも演じるにあたり、実際に子供を亡くしたとき、人はどんな心理状態になるんだろう、それを少しでも知りたくて、自殺だけではなく、事故や病気、事件でお子さんを亡くしたかたの手記やルポルタージュを何冊も読んだんです」
──あの迫真性はそういったところから生まれたんですね。最近、現実でも悲惨なニュースが多くて、つらい気持ちで見ているかたも多いと思います。
「そうですね。ぼくが読んだ手記なども衝撃的でした。でも、そこから役への理解と想像力が深まっていって。お子さんを持つかたが映画を見たら、フィクションということを超えて、つらくなるかもしれませんが。でも、安藤が悲しみのどん底まで沈んでいき、そこから立ち上がっていくさまは、見るかたにきっと共感してもらえると思う。主人公に、徹底的に頑張ってほしいと思ってくれたらなと、思っているんですよね」
撮影■矢口和也
※女性セブン2015年10月15日号