『松屋フーズ』は国内に約1000店舗を展開する牛丼チェーンでありながら、カレーも年間2000万食を売り上げる主力商品となっている。同社を象徴するメニューが1997年に生まれた『カレギュウ』だ。カレーと牛メシをドッキングさせた画期的なこの一品は、創業者である瓦葺利夫会長の発案によって生まれたものだった。
「弊社の美味しい『牛めし』と、美味しいカレーを同時に味わってほしいという思いからのアイデアでした。おかげさまで年間500万食売れる人気商品となっています」(商品開発部・久岡利至氏)
発売当初、カレギュウの値段は580円だった。現在は業界の熾烈な価格競争もあって490円となっている。20~30代の男性からは「『カレギュウ』に青春時代を支えられた」という声が数多く聞かれた。
「金のない大学生時代、牛肉がたっぷりのったカレーをワンコインで食えることが本当に幸せだった。バイトの帰りに『カレギュウ』を食うのが、一番ささやかな贅沢だった。今でも食べるたびに懐かしい気持ちになりますね」(30代会社員)
『松屋』でカレーを売り出したのは1980年。以来、35年かけてカレーソースを極めてきた。キーワードは「スパイシーさと安さの追求」。価格を抑えるために具材を極力減らし、カレーソースそのものの質で勝負する。昨年6月、『オリジナルカレー』の価格を370円から330円に値下げした際には、スパイスの配合を増やし、より辛さを強調した本格派のソースにした。
「ほぼ毎日、本社の3階でカレーの試食を行なっています。弊社のカレーの売りはあくまでスパイシーさ。極端なことをいえば、1階までスパイスの香りが届かないとダメだと考えています」(久岡氏)
※週刊ポスト2015年10月9日号