若手芸人の中でも指折りの注目株、あばれる君(29)。今年のR-1ぐらんぷりで決勝トーナメントに残った12人のうちのひとりではあるものの、ブロック内では4人中最下位に終わっており、実績としては地味なものしかない。子供がマネできるような、わかりやすい一発芸を持っているわけでもない。それなのになぜ、あばれる君はテレビで活躍できているのか。
ブレイク直前の2014年初頭に「今年ブレイクする芸人」としてあばれる君を推していたお笑い評論家のラリー遠田さんは、売れている要因をこう分析する。
「今、若手芸人にとってテレビは“先輩ばかり”の世界です。ライブでまとめ役になるような芸人でも、テレビに出れば先輩芸人にいじられるところからスタートします。だから器用な人より、最初から突っ込みどころ満載のいじられキャラのほうが受け入れられやすい。あばれる君は話を振られた時に、ガチガチに緊張していたり、キョドっていたり、受け答えもちょっとヘンだったりと、いじりどころがたくさんあります。いじられ上手、“受け身の能力”が高い芸人さんだといえます」
主催するトークライブにあばれる君をゲストとして招いたこともあるラリーさんによれば、あばれる君はテレビではいくぶん緊張度合いが増しているものの、普段もあのようなキャラクターだという。どうやらあの“テンパり芸”はナチュラルなもののようだが、ネタのほうはどうか。
「TBSの『日10☆演芸パレード』というネタ番組に出た2013年ごろから注目されるようになりました。正統派の一人コントでいろんなシチュエーションがありますが、基本的にはテンパる人のネタ。自分のキャラをわかった上でネタを作り込んでいるんだと思います。普段はあのようにテンパっているのでわかりにくいのですが、実は真面目な性格で、中学と高校の社会科の教員免許を持っていることでも知られています。勉強熱心な一面もあるので、ネタの背後にも知性や品があるように思います。
また視聴者には、この真面目で必死というキャラが新鮮に映っているのかもしれません。他の芸人さんは“どれだけふざけるか”で勝負していますが、あばれる君の場合は“どれだけ真面目か”で笑いにつなげています」(ラリー遠田さん)
2013年には、高校時代から付き合っていた女性と結婚。その一途さも、あばれる君の真面目さを物語るエピソードの一つだといえる。このようなキャラが企業の目にも留まったのか、最近はバラエティー番組だけでなく、サントリーBOSSや朝日新聞のテレビCMでもあばれる君の姿を見ることができる。どちらのCMでもあばれる君の存在感は抜群だ。
「企業から見ても、あばれる君のイメージは良いのではないでしょうか。丸刈りで、汗をかくほど必死で、常に緊張している。見た目にもわかりやすいキャラなので、ドラマやCMでも、その個性がハマりやすいところではチャンスがあると思います。普通、テレビに出る人は最初は緊張してもだんだん慣れてくるものですが、あばれる君の場合はまだまだ緊張している様子が伝わってきます。こういう人がテレビの中に一人いると面白いですよね」(ラリー遠田さん)
異色の“テンパり芸人”にとって一番怖いのは、仕事に慣れることかもしれない。